視力を失っても勉強への熱意は冷めず、ついには世界中で有名となったシーナアイエンガー
シーナアイエンガーとはどんな人か
ビジネスを成功へと導くために、経営者や指導者は様々な経済学の論文や理論を勉強し活用していることでしょう。
あらゆる技術が発達・進歩してくると、経済の流れなどにも変化が見られますが、人の行動パターンは時代が変わっても基本的には同じようなイメージがあります。
人の行動と経済を結び付けた学問として、近年脚光を浴びている行動経済学には様々な理論がありますが、シーナアイエンガーが提唱する選択の科学も、行動経済学の有名な理論として知られています。
シーナアイエンガーは、1969年にカナダのトロントで生まれました。
インド移民でアメリカに移り住んですぐに眼の病気にかかってしまい、ハイスクールのころに視力を失ってしまいます。
しかし、そんな不幸な状況でも学問に対する気持ちは大変強く、熱心に勉学に励みました。
アメリカが世界の中心としての役割を果たしている理由は自ら選択することであると思い、選択を研究テーマとしてその研究を続けてきたそうです。
現在はコロンビア大学でビジネススクールの教授として教鞭をとっていますが、それ以前にはペンシルベニア大学で経済学士号を取得し、スタンフォード大学では社会心理学博士号を取得するなど、経済と人間心理について研究を続けています。
選択の科学とは、どれくらい有名なのか
シーナアイエンガー教授の著書である選択の科学は、ビジネスの分野で幅広く活用されています。
私たちの人生は基本的に運命・偶然・選択の3つから成り立っていると、この選択の科学では述べられています。
この3つの中で、自らの意思で唯一コントロールできる選択が、人生で特に重要であるという理論、選択の科学であると言われています。
良い人生を送るためにも、選択の質を高めていくことの重要性を説いています。
シーナアイエンガー自身は、インドからの移民でシーク教の家庭で育っています。
このシーク教の教えでは食べ物や服装、結婚に至るまで、すべてにおいて自由に選択することはできないと考えられていました。
しかし彼女がハイスクールの頃に生活を送っていたアメリカでは、自らの意思ですべてを決定するのは当たり前で、その考え方に魅了されてから選択について深く研究するようになったと推察されます。
奇しくも彼女が選択の科学の論文を発表するとアメリカでは高く評価され、世界から認められる経済学者・心理学者となりました。
日本でも選択の科学をテーマにした著書は数多く出版されており、その認知度の高さを伺い知れます。
選択は人生において重要ですが、この質を高めるためにはどのようにすることがポイントとなるのかが問題です。
有名な理論、日常で使われている場面
選択の科学で提唱される選択の重要性についてですが、必要以上に選択を意識しすぎると、逆にその質を落としてしまう可能性もあります。
何故なら、人間には選択をすることに対して強い思い込みを持ってしまう傾向があるからに他なりません。
日常でよくある例としては、結婚に対する考え方が挙げられます。
現在の日本では、結婚相手は恋愛で選ぶことが一般的で、8割以上の人が恋愛結婚を選択しています。
しかし私たちが生活する日本でも、戦前から戦後にかけてはお見合い結婚の方が一般的と考えられていました。
現在のインドでは、昔の日本のようにお見合い結婚が主流で、恋愛結婚をする夫婦の方が圧倒的に少ない傾向にあります。
もちろん恋愛でもお見合いでも結婚に関しては選択の自由があり、どのような形で結婚相手を選んでもかまわないのですが、恋愛結婚をした方が結婚後も幸せとは限らないというデータもあります。
つまりどちらが良いか悪いかというのは、価値観や環境によって選択方法が異なっているだけ、ということになります。
仕事やビジネスの中でも、選択は重要になってきます。
選択肢をこれまでの一般論の中からのみに選んでいると、新たな可能性を広げることを遮断する可能性があります。
選択を自ら創造する力を持つことで、ビジネスチャンスをつかむこともできるでしょう。
もちろん日常の生活においても同じで、選択肢の創造性を持つ人は心も生活も豊かになると考えられます。
シーナアイエンガー自身が、大学院生のときに選択について実際に研究のために行った実験があります。
この実験というのが、ジャム売り場にジャムを置いた際に、人の行動パターンを調べる研究でした。
6種類のジャムを並べた場合と、24種類のジャムを並べた場合で比較をしました。
一見すると種類の多い方が喜ばれるのかと思われていましたが、多すぎると人はストレスを生むということがこの実験では知られることになります。
この実験はマーケティングにも活用され、選択肢が多すぎると購買意欲を逆に下げるというのが理解されました。
選択に対する考え方が人生にも大きく関係してくることを研究しているシーナアイエンガーですが、すべて自分で選択することが絶対正しいわけではないとも考えています。
選択の方法、より良い選択をするための方策など、今後も探求は継続していくものと推察されます。