不合理な行動をとってしまう人間の心理とは?ビジネスに活用できる行動経済学を学ぼう。

ダン・アリエリーとはどんな人か

人の行動パターンや心理を研究した論文をビジネスに活用することは、現代の社会では珍しくはありません。
行動経済学と呼ばれる学問はビジネスに最も活用されている経済学になり、世界中の企業がその理論を研究し実用化していると言われています。
行動経済学の様々な理論を提唱する学者は世界に何人も存在しますが、予想通りに不合理という行動経済学の研究者として知られるダン・アリエリーは、現代の主要な行動経済学者として高く評価されています。
1967年にアメリカのニューヨークで生まれたダン・アリエリーは、3歳の時に父の祖国イスラエルに戻っています。

高校時代にはイスラエルの青年運動団体で活動を行っていましたが、夜間に行う伝統儀式の準備中に可燃物の爆発事故が発生し、この事故によって大火傷の重傷を負います。
この時の体験から、痛みを伴う治療を最善な状態で行うことについて研究するようになった、と考えられます。
高校卒業後テルアビブ大学に進学したアリエリーは、哲学と心理学を学びますが、後に心理学のみに注力するようになります。
1991年には心理学の学士号を取得し、他の大学にて認知心理学の修士号も続けて取得し、心理学者としての研究をさらに拡大していったと考えられます。
1998年から10年間、MITで教鞭をとった後に心理学・行動経済学の教授として指導を行っていますが、現在も現役の大学教授として活躍をしています。
人の行動・心理についての論文を数多く発表していますが、中でも代表的なものが予想通りに不合理と呼ばれる理論で、この考えは多くの企業・業界が参考にしているものと言われています。

セールと聞くといらないものまで買ってしまう人が多いのではないでしょうか。

予想通りに不合理とは、どれくらい有名なのか

経済学で考察される理論は、概ね合理的に考えられていますが、実際に我々人間は合理的な物事の考え方を持たず、不合理な行動を取ることが多いと考えられています。
この人間の不合理な行動に関して研究した理論が予想通りに不合理で、ダン・アリエリーが一貫して提唱している理論です。
人は基本的に相対的に比較をすることで、物事を判断する習性があります。
分かりやすい例で言えば、特に男前でも不細工でもない極めて普通の男性でも、男前ばかりの集団の中にいると不細工に見えてしまうことがあります。
逆に不細工な男性ばかりの集団に同じ普通の男性が入ると、今度は男前にその男性が見えてしまうというのが、相対的に物事を判断する結果の一つです。

行動経済学的な例を次に挙げてみたいと思います。
小売店での価格に表示で定価20000円の商品を14800円で販売しているときに、「20000円⇒14800円(今だけの限定価格)」と表示されていたとします。
このときの消費者の心理としては、とても安いものであると感じるものでしょう。
初めに提示された情報に、その後の決断が大きく影響される状況を、アンカリングと呼んでいます。
このアンカリングも、人が相対的に物事を判断する習性を持つことを表している、と考えられます。
外食をするときも、見た目が豪華な高級そうなレストランのランチと、昔ながらの古ぼけた喫茶店が提供するランチでは、実際に味が同じだったとしても高級そうなレストランのランチの方がおいしく感じてしまうということも、分かりやすい例となります。
人間は一見合理的に行動しているようでいて、実は不合理な行動を繰り返しているものです。
この理論に関する著書は日本でも数多く出版されており、この理論が有名であることがよく分かります。

有名な理論、日常で使われている場面

予想通りに不合理の理論は、日常の生活での私たちの行動に多く表れています。
事象以外に使われているような場面についてですが、イベントやキャンペーンで1日限定や数量限定で無料になる、というものをよく見かけると思います。
スーパーなどでも「1000円以上お買い上げの方に〇〇商品を無料でプレゼント」というチラシなどを見ることがあるでしょう。
この場合に無料の商品がそれほど必要でないものであっても、無料というだけでお得だと思ってしまい、必要でないものを1000円以上買ってまでも無料の商品をもらうための行動をしてしまうという現象です。
冷静に考えると、自分にとってそれほど価値がないものにも関わらず、無料という言葉によって不合理な判断をしてしまった、分かりやすい場面と推察されます。

逆に薬などを購入する際には、安い薬よりも高い薬の方がよく効くと思ってしまう心理なども、不合理な行動の一つと考えられます。
これは薬に含まれる成分などの表示でも、〇〇成分が通常の2倍含有などと記載されているものが、よく効くのではないかと錯覚することも同様と推察されます。
テレビのバラエティ番組などでも、この具体的なシーンをよく見かけます。
例えば日本で有名なギタリストが生で演奏を行い、そのときに使用していたギターを見せられると、ほとんどの人がそのギターも超高額な名器だと思ってしまいます。
しかし実は、そのギターは中古店で安く買った普通のギターだったという話もあり、これなどはまさに人の思い込みが判断を誤らせている代表的な例だと考えられます。