得したいけど損はもっと避けたい人間の心理をマーケティングに活かしていこう

損失回避性とは

損をすることと得をすることがある場合、得する方を選ぶような気がしますが、人は心理的には損することを回避する判断を無意識にする傾向があります。
大きな徳が得られる可能性があるとしても、損をするリスクがあると感じた場合に損をしないための行動を優先する考え方や法則を損失回避性と言います。

行動経済学、マーケティングでその法則性を活用することの多い損失回避性は、その詳細な法則性について理解しておくことが有効活用には欠かせません。
損失回避性の法則は、利益と損失この二つの選択肢から選ぶときに利益を求めることよりも、損失をできるだけ避けることのできる方を選ぶ心理的な傾向のことです。

 

 

無意識の心理をマーケティングに役立てよう

 

 

損失の痛みを知る人は、ポジティブに利益を求めることよりも損失が起きるかもしれないというネガティブな心理が強くなり、守りに入ることが多くなります。
この損失回避性の法則は、行動経済学の権威ダニエル・カーネマンが提唱するプロスペクト理論の中にも含まれています。
判断に迷ったときに現状を維持することを選ぶ、現状維持バイアスも損失回避性の法則に近い選択の一つです。
損失回避性の法則には主に3つのパターンがあります。
一つ目は、損失が起こることがわかっている場合に、できるだけ損失を少なくできるものを選ぶことです。
例としては、負債が半分になる選択肢と負債が50%の確率でなくなる選択肢がある場合、負債が無くなる方を選ぶ傾向があります。
つまり損失が、より少なくなる負債が無くなる方が損失を回避する率が高いというわけです。

二つ目は、利益が必ず得られるとわかっている場合は、確実性の高い方を選ぶ考え方です。
例としては、無条件で10万円がもらえる場合と30万円が1/2の確率でもらえる場合に、確実に10万円がもらえる方を選ぶ人が多くなります。
最後の三つめは、利益を得られるか損失を受けるかの二択の場合に損失を回避する方を選ぶことです。
例としては、確率1/2のくじであたりなら10万円がもらえるが、外れなら10万円払うとき、そのくじを引かない傾向が強いそうです。
このように、より損失が少ない選択をする損失回避性はマーケティングにおいて重要な法則の一つです。

 

 

https://www.kcsf.co.jp/marketing/prospect.html

プロスペクト理論と損失回避性|経済行動の心理学/かんでんCSフォーラム

 

 

損失回避性の著者、有名人について

利益を得られることによる満足感よりも損失からくる苦痛の方が大きいと感じ、損失を回避することの方を重視する考えを、損失回避性と心理学・行動経済学では呼んでいます。
この損失回避性が経済学の中で提唱されたのは、世界的に有名な行動経済学者ダニエル・カーネマンのプロスペクト理論によってでした。
ダニエル・カーネマンは、1934年に現在のイスラエル テルアヴィブで生を受けました。

その後、エルサレムのヘブライ大学で心理学を学び、イスラエル国防軍の心理学部門で従事します。
アメリカに移住後、カリフォルニア大学バークレー校で心理学の博士号を取得します。
1979年にエイモス・トベルスキーとともにプロスペクト理論を提唱し、行動経済学者としての地位を確かなものにします。
日本語訳の著書としては、『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』 『ファスト&スロー』などがあります。

 

 

日本語訳されている本もたくさんある

 

 

有名な事例

利益を得ることと損失を被ること、損失を被ることを回避する意識が強くなる考え方を損失回避性と呼びます。
マーケティングなど、ビジネスシーンに活用されることが多い理論ですが、日常のシーンでの事例で分かりやすく説明したいと思います。
恋愛においても損失回避性は働いています。
例えば、喧嘩ばかりしていて仲が悪くなっているのに、別れることができずに付き合いを続けるカップルがいたとします。
これは、別れて新たな恋人が見つからないかもしれないという損失を回避する意識が働いているからです。
よく使用しているポイントサービスでも、損失回避性が起こることがあります。

 

 

損をしたくないという感情は誰にでもある

 

 

例えば、期限が迫ったポイントが1000円分残っていたとします。
しかし、そのポイントは5000円以上の買い物をしないと使えません。
現在必要なものがなければ1000円分のポイントをあきらめればいいのですが、1000円のポイントが勿体ないと感じて、5000円分の買い物をしてしまうことが損失回避性になります。
ネット通販や外食をするときにレビューを観る人がいますが、レビュー数の多い食事や商品を見つけたときに高評価が圧倒的に多い場合は、買いたい食べてみたいと即座に思っても、高評価と低評価が同じくらいであれば迷う人もいるでしょう。

これも低評価が多くあることで、損をしてしまうかもしれないという損失を回避する気持ちが表れている例になります。
このように様々なシーンで損失回避性が私たちの意識の中では働くことがあり、その意識に流されないことが重要になります。
サービス・商品を提供する側は人の持つ損失回避性を理解して、マーケティングに活用することがポイントです。

 

 

https://service.plan-b.co.jp/blog/marketing/11273/