仕事でもプライベートでも使えるナッジ理論の現在と今後

今後のナッジについて

人間は感情をコントロールする理性というものが働き、合理的に物事を判断して進める能力を持っています。
しかし、常に合理的に熟慮を重ねて行動できるわけではなく、時に合理的とは程遠い行動をすることもあります。

この考えが行動経済学の基本になっていますが、この頭では解かっていても合理的ではない行動をするところを、軽くアシストするような形で正しい方向に導くのがナッジ理論の考えです。

  

喜怒哀楽いろんな勘定を時にコントロールしながら生きている

 

これまでにもビジネス、行政サービス、社会活動など様々な面でナッジが活用されてきましたが、今後はどのように活かされていくのでしょうか。
現在、世界中で猛威を奮う新型コロナウィルスは日本国内でも拡大の一途を辿り、私たちはこれまでの生活とは違う行動変容を求められています。
多くの人はソーシャルディスタンスを保ち、人流を減らすよう努めていますが、全ての人が最適な選択をできるとは限りません。

新型コロナウィルス対策の中にも、ナッジを活用した取り組みを多く見ることができます。
例えば、スーパーやコンビニ、量販店などのレジの周辺に足跡のステッカーやシールを貼って、自然な形でソーシャルディスタンスができるようにする方法などは、代表的なものと言えるでしょう。
今後は医療・介護の現場においても、人を自然により良い方向に導くナッジの応用が進み改善されることが期待されています。

 

目印があるとわかりやすい

 

行動経済学について

ナッジ理論を語る上で欠かすことのできないのが、行動経済学です。
行動経済学は1950年代に初めて研究されましたが、当時はまだ従来の経済学の考え方が主流で、一般に認識されることはほとんどありませんでした。
本格的に研究が進展し始めたのは1990年代になってからで、急速にビジネスシーンでの活用が進んでいきました。
行動経済学と経済学には、基本となる定義に大きな違いがあります。

 

様々なデータを研究したことだろう

 

経済学では、人は経済的合理性を基準として行動・判断する、という定義により成立していました。
すなわち人間は自分の利益になることを最優先として、利益が確実に得られる方向に向かって合理的に行動すると考えられています。
一方の行動経済学では、人は必ずしも自分の利益を最優先とし、必ず合理的に行動するとは限らない、そこには感情が入ることもあるというように考えます。
端的に言えば、人は全ての行動を合理的に進めると考えた研究が経済学で、感情に左右されて非合理的な行動をすることがある、と考えた研究が行動経済学です。

2002年に行動経済学研究の第一人者ダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞して注目され、2017年に同じく行動経済学の第一人者でナッジ理論を提唱し広めたリチャード・セイラーが、再びノーベル経済学賞を受賞したことでビジネスにおける主流の考え方として認められるようになりました。
行動経済学という堅苦しい呼び方をするため、難しいことのように思うかもしれませんが、日常生活における行動は行動経済学を知る上で一番解かりやすいモデルケースになります。
例えば合理的に考えたら、近所の洋食屋さんでハンバーグを食べる方がリーズナブルですが、デートで彼女と食事をするときは高級レストランやホテルなどのステーキを選ぶことは、行動経済学の理論に合致した行動になります。

  

シチュエーションにより違うプランを考える

  

ナッジによるミライについて

行動経済学の考え方は、行動理論としてナッジが世界中に浸透しつつありますが、今後どのように進化を遂げていくのでしょうか。
ナッジには基本的に二つのアプローチ方法があります。
人間の持つ自分で選択肢を選ぶよりも、初めから決まったものの方が楽でいい、という惰性の部分を利用する方法が一つです。
もう一つは、提供された情報や比較対象を意図的に作ることで人の意識を変えて導く、という方法です。

簡単に言うと、行動変容を起こして効果を導き出す方法と、行動変容を起こさずに効果を導き出そうとする方法の二つがある、ということになります。
しかし人は変化に反応するのは初めのうちだけで、同じ方法を続けると持続せず、効果が薄くなる傾向があります。
人間は行動経済学で研究されている通り、もともと合理的な行動に関しては限定的で、感情で非合理に動いたり、慣れると惰性で行動したりする生き物です。

 

頑張りたくても三日坊主になりやすい生き物である

 

このような特性を持つ人間に行動変容を起こさせるには、行動変容することの価値を理解してもらうことが重要です。
人の持つ認知バイアスを取り除くには、ナッジを利用して情報を提供し、受け手側の意識を変化させる必要があります。
しかし「面倒くさいことをしたくない」という意識と、「習慣になっていることを変えたくない」というデフォルトデバイスの二つを取り除くには、ナッジだけでは困難を極めます。
この点がナッジの大きな課題ですが、「他の有効な手法を組み合わせる」または「環境や人によって使用するナッジを使い分ける」ことなどが、これからのナッジのレベルアップに繋がっていくことでしょう。

 

https://www.insource.co.jp/contents/column_nudge_creation.html

読み手の心情に働きかけ、行動を促す資料とは
~「ナッジ理論」を活用した資料作成術/insource