GDP22兆円を失う大きな課題「事業承継」特集 事業承継の課題とは

事業承継がなぜ問題になってるか

日本には世界を対象としたグローバルな企業も数多くありますが、日本の経済を真に支えているのは国内至るところに存在する個人事業主や中小企業の存在です。


現在の日本は、世界大戦の敗北により大きなダメージを負った日本は、戦後目覚ましい成長を遂げて世界有数の経済大国となりました。

その中心は日本人特有の繊細な技術を有した中小の企業で、その多くは一代で長く経営を続けていました。

その経営者たちも高齢になり、次世代の経営者へと事業を承継することになりますが、ほとんどの中小企業が事業承継において大きな問題を抱えています。


事業承継は会社経営の権限全てを引き渡すことになるため、その決断は大変重要で、 特に問題になるのは、中小企業の多くが親族で経営されていることで、後継の候補は兄弟やその子供が多く、十分な経営ノウハウを持たないまま事業が承継される危険性がある点です。

ノウハウを持たない人が事業を承継すると、運営が上手くいかずに後退を余儀なくされる可能性もありますし、従業員との信頼関係が大きく損なわれる可能性も考えられます。


M&Aで事業を承継することも方法と言えますが、日本人的な心情とは大きく異なる場合もあり、創業者の親族との間でトラブルが発生することも珍しくありません。

企業の財務分析など多くの分析が必須

事業承継がスムーズにならない理由

中小企業の事業承継でトラブルが発生してスムーズにならないことにも、いくつか理由があると考えられます。

①事業承継に関する知識がほとんどないまま進めようとして承継が進まない、

その事業の知識や経験・技術に関しては素晴らしい実績を持つ経営者でも、事業承継には法律の知識も必要ということから、個人ではスムーズに進めることは困難と容易に想像できます。

②相続に関する問題も、事業承継をスムーズに行えない課題になる。


親族に事業を承継する際に親族が一人であれば問題はありませんが、財産を相続する親族は大抵の場合は複数いると思われます。
そのため財産・資産の遺留分の権利を他の親族から主張されると、事業承継に大きな問題になります。

③後継の承継者そのものの問題も、事業承継後に表面化される可能性もある。

事業承継が前経営者が現役のうちに行い引き継ぎが十分にされていたり、長くその事業で活躍した方に承継された場合はあまり問題にならないと思いますが、前経営者の突然の死去により十分な引き継ぎがされていないときは、大きな問題が起こる可能性は高いと考えられます。
後継者が事業をスムーズに運営するまでには時間がかかり、事業そのものにも大きなマイナスが生じる可能性があります。

事業承継の対応策

事業の承継には、あらかじめ十分な時間と準備が必要になるかと思われます。
対応策をしっかり講じておけば、事業承継はスムーズに運ぶことができます。

事業承継の対応策を講じるには、まず事業の現状を把握しておくことが重要です。
現状の従業員の人数や年齢層、総資産額や資産価値などをまずは把握しておくことが大事で、会社の債務や事業の市場における競合力なども、深く理解することが重要です。
相続を想定して法廷上の相続人や相続される財産を事前に特定しておくと、事業承継の際にプラスになると思われます。


経営者個人名義の株式や不動産、預貯金についても把握しておくことがポイントです。 後継者の候補者を早めに選定して時間をかけて引き継ぐことが必要です。

事業承継のガイドライン

事業承継をスムーズに行っていくためには、簡単に進められる手順があるとスムーズに問題なく遂行されることから、中小企業の事業承継の指針となるものをまとめた資料が、中小企業庁で策定されています。


それが平成18年に出された事業承継ガイドラインです。

事業承継ガイドラインには、「事業承継対策の重要性」、「事業承継の問題点」、「事業承継計画の必要性」、「事業承継を円滑に進めるためのステップ」、「経営者をサポートする仕組み」という5つを、分かりやすく要約して解説しています。

第1章の事業承継の重要性では、日本における中小企業の大切さも謳われています。

第2章の事業承継の問題点では、潜在的に潜む後継者不足の問題点について詳しく解説されています。

第3章は会社の10年後を見据えた計画の重要性を、第4章は事業承継のステップを分かりやすく紹介しています。
第5章では、事業承継をサポートする仕組みについても紹介していますので、事業承継を検討する経営者の方は早い段階で目を通しておくとプラスになると考えられます。

事業承継の今後の展望

大企業は社員数も多く人材が豊富であることから、人材育成のシステムや計画もしっかりと立案、実施されますが、一方の中小企業では後継者の育成を検討していても、企業の規模の問題で育成のシステムを作り上げることは大変難しい、と推察できます。

また中小企業の多くは創業者の決断力やカリスマ性に依存していることも多く、事業を後継者に承継することに難色を示すことも考えられます。

このような状況が続くと結果的に事業の承継は思うように進まず、トップの経営者が現役で働けなくなった際に、事業の存亡そのものが危うくなることも珍しくありません。

今後は長年日本の経済を支えてきた多くの中小企業の経営者が、高齢化により事業承継の問題に直面することが想像されます。
この事業承継の問題を解決するためには、事業承継対策の周知と専門家によるサポートが欠かせません。

事業承継の対策と仕組みが完成することで、事業承継の展望が明るいものとなり、日本経済も更に発展していくと期待できます。