後継者問題は日本のものづくり全体の問題

後継者について

日本の製品はメイドインJAPANとして世界中の国から認められ、日本の製造業は昭和から平成に掛けて躍進を遂げました。


しかし平成20年後半頃から、製造業におけるデータ改ざんやトラブル隠ぺいなどの様々な問題が表面化し、日本の製造業は大きな分岐点を迎えています。
製品の信頼・品質に関する問題と共に近年大きな課題とされているのが、中小企業・自営業者の後継者の問題です。

日本には古くからある伝統芸能や伝統工芸が数多く存在し、専門的な技能や知識の必要性から後継者が不足していることは、よく知られていると思われます。
ただ後継者が不足しているのは、伝統芸能や伝統工芸に限った問題ではありません。

中小企業や自営業を経営している方は、後継者不足で事業を継承できずに悩んでいる、と言われています。

事業承継すると言っても、会社経営はすぐに明日からできるものではなく、技術や知識・ノウハウなども学ばなければなりません。
後継者は、事業を永続的に運営するために最大限の努力を要します。

後継者問題は日本の課題

日本には、素晴らしい技術を持った職人やエンジニアが存在しています。
いわゆる町工場と呼ばれる中小の製造業の工場には質の高い製品を作るところがたくさんありますが、その多くが後継者がいないことから、事業の継続か廃業かで悩んでいることが想像できます。
経営者の方にとっては大きな問題ですが、日本の経済にも大きく影響を及ぼす問題と言え、後継者問題を解決することが日本の経済界の行方を大きく左右すると思われます。

経産省などの調査によると、中小企業の経営者の平均年齢は2007年以降上昇すると言われ、その大きな理由は、昭和の高度成長期を支えた団塊の世代が60代を超えてきたことと重なります。


大企業の多くは65歳定年制を採用していますが、中小企業の経営者には定年はありません。
しかし経営者として手腕を発揮するための能力が低下し、引退を考えるのも65歳前後と考えられます。
今後は経営者の高齢化が進むことが想像でき、後継者問題の早急な対応策が求められるのが現状です。

後継者の選別

後継者の選別は、事業の存続に大きく関わってくると考えられます。
一般的に親族経営の中小企業や自営業者では、自身の子供を後継者にして事業承継をすることが多いと思われます。
しかし事業を存続するためには後継者の選別は大変重要で、後継者選びの指針やポイントを理解しておくことが望まれます。

事業承継における後継者選びは3つに大別されますが、パターンによるメリット・デメリットがあります。
一番多いのが、実子を含む親族を後継者に選ぶパターンです。
子供はもちろん配偶者や兄弟姉妹、または甥や姪を後継者にすることも、中小企業や自営業では多いと思われます。

親族を後継者に選ぶメリットは、株式や資産が第三者に渡らず事業承継による資本の減少を抑える、というメリットが考えられます。
関係者からも理解を得られやすい、という点もメリットと思われます。

デメリットとしては、親族であるが故に後継者としての経験や能力が劣っていても承継が可能なため、事業承継後に経営が悪化する危険性も孕んでいることが考えられます。
次に従業員を後継者に選ぶパターンがありますが、こちらは事業の実務に精通した人が後継者になることで、運営がスムーズに運ぶというメリットがあります。
デメリットは従業員間で後継者争いなどが起こり、社内のコミュニケーションが悪化することが考えられます。
最後はM&Aで後継者を選ぶ方法ですが、事業全体を売却して第三者に事業を委ねることです。


メリットは経営者が売却益を得られることですが、M&Aの場合は事業を買い取った側に事業の進め方を決定する権利があるため、希望通りの承継とはならないデメリットも考えられます。

後継者スタートアップのサービスが期待されている

後継者のスタートアップ

中小企業の経営者の多くがオーナーであり、自身が引退した後は実施や配偶者を事業後継者に選ぶことが、昔は多かったように思われます。
過去の新聞記事や経済白書などでは、昭和の時代に約90%の経営者が親族を後継者とする事業承継を行っていましたが、平成20年以降の調査で約40%あまりの経営者が親族以外の第三者へのM&Aでの後継者選びを考えている、と言われています。

M&Aによる事業承継では、事業の財政を健全化するための改革やスリム化などが進むメリットがあります。
ベンチャー企業によるM&Aや、新規参入者に後継者となってもらい後継者のスタートアップを図ることも、今後の事業承継では増えると推察されます。

また親族を後継者とする際に、オーナーの時代とは異なる新たな事業展開を進めるスタートアップを前提とした後継者選びも、永続的に起業を存続する方法と思われます。
事業承継の取組みや後継者選びが進んでいない中小企業をサポートするスタートアップガイドを作成する地方の商工会議所も、近年では増加傾向にあるようです。

後継者問題の今後

日本には何万という企業が存在していますが、大企業と呼ばれる企業はそのほんの一握りで、大半は中小企業や自営業です。
親族経営の中小企業が今も大半で、後継者選びに苦慮している会社はたくさんあり、その対策は行政のサポートが必要であると考えられます。


後継者問題の今後に関しては、後継者の育成を企業に全て委ねるのではなく、後継者育成のガイドラインやスタートアップガイドなどを国や地方自治体などの行政機関がサポートする体制作りが欠かせない、と思われます。

高齢化が進んだ日本の中小企業が、事業承継をスムーズに行い日本経済の低下を防ぐことが、今後の大きな課題であると推察できます。