事業承継の解決策??「M&A」の状況について

1.事業承継についてのM&A


日本の経済を支えているのは、全国に存在する中小企業の存在です。
大企業が需要を伸ばし世界で活躍するのも、高い技術と品質・サービスを持つ中小企業があるからで、中小企業の繁栄失くしては日本の経済の将来は暗雲が立ち込めるということです。
そんな中小企業が存続するためには、事業承継をトラブルなく行うことがとても重要です。

中小企業はオーナーとしての経営者が多く、後継者には実子を含む親族を選ぶことが大半でした。
しかし近年では事業の永続性を重視する経営者も増加し、親族にこだわらないM&Aによる事業承継を選ぶことが珍しくはないようです。
特に中小企業経営者の高齢化が近年は益々深刻化し、親族に後継者がいないという企業も増えてきました。
経営者にとっては、適当な後継者がいないまま事業承継をして業績が悪化するくらいなら、事業をM&Aで売却して利益を得る方がプラスと考え、事業承継におけるM&Aを検討する経営者も多いと思われます。

2.事業承継M&Aの現在


日本の中小企業は労働力の低下や人材不足が、2010年以降から深刻化しています。
特に製造業・サービス業・小売業では顕著に人材不足が引き起こり、必然的に後継者選びが難航している企業が増加する要因と考えられています。
また製造業・サービス業・小売業は、高度成長期に比べると肉体的・精神的な労働の負担に比べて収入や利益が伴わないという課題も想像でき、たとえ親族であっても後継者として事業を承継することを望まないことも珍しくありません。
このような現状から、事業承継M&Aを検討する企業が増えていますが、一昔はM&Aと言えば、企業の乗っ取りや敵対的買収の悪いイメージがあり、日本の企業には受け入れがたいものがありました。


しかし近年は、事業を承継する一つの手段として、積極的に行われるようになりました。
1985年以降の統計では、阪神大震災・リーマンショック・東日本大震災などの大きな問題が発生した時期を除いた毎年、事業承継M&Aが増加傾向にあると考えられます。事業承継において、M&Aは欠かせないポイントであると言えます。

人手不足も中小企業の悩み

3.事業承継M&Aの課題


日本の中小企業の存続には、事業承継M&Aは欠かせません。
単純に売却益を経営者が得られ、雇用が維持されるなどのメリットばかりではなく、課題もいくつか考えられます。

課題としては、まず理想の買手先を見つける必要があるところです。
M&Aで事業承継するためには事業に魅力を感じる買い手が必要ですが、簡単に見つかるわけではなく、買手探しに困難を極めることも十分に考えられます。
将来性のある新たな事業展開を見せる企業であれば、買手も多く自身で見つけることも可能ですが、中小企業ではなかなか難しいと思われます。


この場合はM&Aの仲介を行う企業に委託するのですが、手数料が高額であることも課題の一つです。
親族間での事業承継では仲介手数料は発生しませんので、この費用が高くなると費用の負担も大きくデメリットになるかと思われます。
M&Aによる事業承継では従業員もそのまま引き継がれることになりますが、売却時の契約条件によっては事業の承継完了後に、従業員が大量に解雇される事例も存在しています。


事業承継M&Aを実施する際には、雇用維持に関する取り決めもしっかりと行うことが重要です。

4.増加している理由


事業承継でM&Aが増加しているのは、中小企業の高齢化が最も大きな要因と考えられています。
高齢化に伴い事業運営の判断力や働く上で体力に問題が発生し、事業を存続することが困難になることは比較的容易に想像できます。
バイタリティに溢れ年齢を重ねても事業を最前線で運営する経営者もいますが、突然病気になったり不慮の事故によって事業の運営が不可能になってしまうこともあります。


このような場合は特に事業承継が困難となり、M&Aによる事業承継を選ぶ増加の一因となっています。
中小企業庁の調査結果によると、2020年以降は中小企業の後継者不足は加速し、事業承継M&Aの比率は50%に近付くと言われています。
さらにM&Aに関するマイナスイメージが近年は薄くなり、抵抗が無くなっているのも増加理由と考えられます。

5.今後の展開


事業承継M&Aの今後の展開についてですが、中小企業や自営業の経営者の平均年齢は、年々高齢化の傾向にあります。
日本が高齢化の社会になって久しいですが、経営者の高齢化対策は進んでいないのが現状です。


医学・医療の発達により、長寿になり高齢になっても元気に働く人が増えているのは日本にとってメリットとなり得ますが、高齢の中小企業経営者が事業を承継できないのは大きなデメリットであると考えられます。
事業承継M&Aは、今後も高齢化が進んでくると益々増加すると思われます。
経産省の調べでも、2018年には3000件を超える事業承継M&Aが行われ、毎年30%以上のハイペースで増加していると言われています。
個人事業専門のM&Aも近年は多くなり、新たな展開を見せることが期待されます。