GDP22兆円を失う大きな課題「事業承継」特集、経済への影響について~後編~

事業承継に必要な手続き


日本が高度経済成長期の時代には、ゼロからスタートして業績を上げ拡大させた大企業もたくさん生まれました。
松下電器や本田技研などはその代表的な企業でもあり、いずれも世界に名の知れた日本を代表する会社へと上り詰めました。


大企業ではなくても、一代で立ち上げて業績を上げてきた中小企業は、日本にもたくさん存在しています そんな会社の事業も、いずれは後継者に承継しなくてはなりません。

しかし個人事業主や中小企業の経営者の多くは、高齢化・後継者不足に悩み進んでいないという現状があります。
高齢になって業務に支障が出る前に、事業承継に必要な手続きを理解しておく必要があると考えられます。また事業承継に必要な手続きについては難しくて面倒、と感じている方も多い。


基本的に、事業承継は4段階に分かれています。
「後継者殿事業承継の合意」から「事業承継の従業員及び後継者以外の親族全員への周知・連絡」、「株式譲渡の手続き」を経て「担保や前経営者の個人保証等の債権の引き継ぎ」と続きます。
そのため事業承継には、専門の法律の知識も必要になると考えられます。

事業承継に関する法律

事業承継と簡単に言っても、大企業のようにコンプライアンスの専門部署や専門家を雇用するような余裕は、中小企業にはほとんどなく、 公的な部分で事業承継をサポートしてもらえれば、「ありがたい」と感じる経営者も多いかもしれません。
事業承継に必要な法律の中に、「経営承継円滑化法」という法律があります。
この法律は、中小企業の事業承継を円滑に進める総合的な支援策として立案された法律で、さらなる円滑化を目指し近年改正されています。


2018年の税制改正大綱の中で条文が大きく改正されていますが、その重要な部分の概要は以下のようであると考えられます。
この改正の大きな目的として、親族以外の人への事業承継の円滑化があります。
以前は親族内の事業承継が90%以上と言われていましたが、近年は40%前後が親族以外への事業承継を希望しているという背景があり、改正されました。
事業承継に悩む中小企業へのサポート機能の強化も、この改正で行われています。

信頼できる人間がいるかいないか


小規模の企業の共済法も改正され、事業承継が円滑化されるように改善されたと考えられます。

事業承継のサービス


昨年の経営承継円滑化法の改正により、事業承継に悩む人が少なくなると期待されましたが、実際は全く異なり、法律の専門家ではない経営者の方にとって、事業の承継は優しいものではありません。
後継者の探し方や、それぞれの会社に適した最適な承継方法、会社を売却する手続や方法など、事業承継を行うためには様々な課題があります。
また事業承継を円滑に行った事例や、逆に事業承継の失敗事例なども知っておくことも必要と考えられます。
そんな事業承継を検討されている経営者の方のためのサポートやサービスは、近年も多く存在しています。


後継者が決定している企業の場合には、事業承継を進める法的な手続きを代行するサービスが必要であり、 経営権譲渡に必要な書類、株式などの資産譲渡に必要な書類、会社のノウハウなどの承継方法に従業員への周知までスムーズに行うためにサポートしてもらえば、安心して承継が可能と推察されます。

後継者が決定していない、M&Aで会社を売却して事業承継したいと考えている経営者の方には、M&Aの進め方をサポートするサービスが必要だと思われます。
近年は、事業承継全般をサポートするサービスが充実していると考えられます。

事業承継のスタートアップ


事業を承継する際に、親族へと承継した時には現状をそのまま引き継ぐ形が多い、と思われます。
一方で、親族でも従業員でもない第三者へと事業が承継される場合には、これまでのノウハウや技術を活かしながら新しい方針を打ち出す可能性が高い、と考えられます。


老舗の店舗や会社を起業を考えていた新しい人が譲り受ける場合には、ベンチャービジネスに分類されると考えられています。
このような事業承継を、事業承継型スタートアップと呼んでいます。
事業承継型スタートアップとは、事業承継を間近に控えた老舗企業を譲り受ける起業家、及び創業から5年未満の幼年期企業が事業展開することを指しています。

老舗の伝統は守るべきですが、事業が永続的に続けられなければ、その伝統も消えゆく運命と言えるかもしれません。
事業承継で新たなスタートアップをすることにより、新たな価値を見出していくことが事業承継のスタートアップの大きな価値と推察されます。

事業承継の有名企業


事業承継は有名な企業でも行われていますが、成功もあればもちろん失敗もあります。
まずは成功した有名企業として、昔は専売公社として国が経営していたJT(日本たばこ)が、M&Aによる事業承継で大きな成功を治めています。
1999年にRJRナビスコのたばこ事業を買収し、事業承継を海外市場へと参入して10倍の売り上げを叩き出しましたが、その背景にはブランディング力の強化、パッケージの一審などがあったと思われます。


さらにネット通販最大手の楽天も、M&Aで大きな成功を収めてきています。
今ではお馴染みになった楽天トラベルも宿泊予約サイトの競合企業を買収し、事業承継したことにより業界でJTBに次ぐ第2位にまで成長をさせた、と推察されます。


一方の失敗事例と呼べるのは、製造業において2009年に家電最大手のパナソニックグループが、リチウムイオン電池世界1のシェアを当時誇っていた三洋電機を買収し、連結子会社化したことが挙げられます。
総投資は約8000億強の大型買収となりましたが、リチウムイオン電池事業は思うような業績が上がらず、最終的に6000億を超える損失を生み出しました。