どの視点を強調してアピールするかで、利益に大きな差がでる強調フレーミング。

強調フレーミングとは

ビジネスに使われる法則や理論は、心理学の分野で著名な学者によって様々な研究・検証がされてきました。

行動経済学の第一人者のダニエル・カーネマンが提唱したプロスペクト理論の中には、

合理的ではない人の心理や行動がまとめられていますが、フレーミング効果もその一つです。

ある数字や行動を強調することから、強調フレーミングという呼び方をすることもあります。

額縁や枠組みを意味する英語のフレームの使われ方が語源となっています。

 

 

同じ内容でも説明により結果に差がでる

 

 

同じことを説明する時でも提示のやりかたや選び方が、合理的ではない選択を導き出す行動や現象を呼びます。

写真や絵画もフレームがあることで、その中身が強調されるように特定の部分を強調して人の印象を変え、

意思決定の判断に影響を及ぼします。

強調フレーミングによって人にフレーミング効果が起こるのは何故なのでしょうか。

人の価値の感じ方は皆が同じ・一律ではなく、それぞれの人が持つ感性や経験値により偏りがあります。

そして経営者には、利益が出ているときは損失を避けて確実性を求め、

損失があるときは確実性よりも多少リスクがあっても利益を求める傾向があります。

この人間としての感じ方と状況によって損得を感じる基準点の違いが、

フレーミング効果を生み出す要因となっています。

強調フレーミングの著者、有名人について

行動経済学と心理学には密接な関係があり、両方を研究・検証する学者も多く存在します。

フレーミング効果(強調フレーミング)は、プロスペクト理論で知られるダニエル・カーネマンと

エイモス・トベルスキーが様々な実験・検証を行い、日本でも広く知られるようになりました。

ダニエル・カーネマンはノーベル経済学賞を受賞し、行動経済学の権威として名を馳せていますが、

エイモス・トベルスキーの存在なくしては、多くの理論は検証されなかったと言われています。

エイモス・トベルスキーは、カーネマンと同じくイスラエルで生を受け、

1961年にエルサレムのヘブライ大学を卒業します。

 

 

多くの研究、著書が今でも高い評価を受けている

 

 

心理学・経済学を大学で学んだ実績を活かし、アメリカに移住後ミシガン大学で

心理学・経済学の研究者として働きました。 ダニエル・カーネマンとは同学問の研究者として、

また友人としても深い繋がりを持ち、共同の研究により1981年にフレーミング効果についての論文を

サイエンス誌に発表します。 この論文は世界中の経済学者からも高く評価され、

カーネマンとトベルスキーは行動経済学の第一人者として認められることになります。

エイモス・トベルスキーは悪性腫瘍のため59歳でこの世を去りましたが、

彼の死から6年後にダニエル・カーネマンはトベルスキーとの研究が高く評価され、

ノーベル経済学賞を受賞しました。 トベルスキーが心理学・経済学界に残した功績はとても素晴らしく、

アメリカ芸術科学アカデミーのメンバーにも選出されました。 トベルスキーが執筆した著作は

どれも興味深いものばかりで、心理学・行動経済学について知りたい時に最も相応しい書籍です。

有名な事例

本質的に同じ現象や物事でも、見せ方や説明の仕方によって人の評価は大きく変わると言われています。

固定観念や先入観が時に不合理な判断を引き起こすことを、認知バイアスと呼んでいます。

表現の仕方で判断が変わる心理的な状況をフレーミング効果と言い、これも認知バイアスの一つになります。

フレーミング効果(強調フレーミング)はマーケティングなどに活用されていますが、

実際にどのように活用されているのかを分かりやすい事例で紹介します。

商品の改善やサービスの改善をアピールする場合に、フレーミング効果は利用されています。

 

 

実例のアピールの違いを見てみましょう

 

 

例えば、「このサービスを体験した90%の人が効果を実感しています」と

「効果を感じなかった人は体験者全体の10%しかいませんでした」という二つの広告文の場合、

前者の方が利益を強調したフレームになっているので、前者を広告として採用すると効果が高くなります。

予防目的の商品でのフレーミング効果の活用方法もあります。

例えばガンは定期的に検診を受けておく方が予防に繋がりますが、

「早期発見することができれば、効果的な治療が可能です」と、

「早期発見できない場合は治療が困難になる可能性があります」の場合、

どちらの広告が効果的かというと後者の方になります。

予防が目的の場合は損失を強調したフレームの方が危機感が高まり、効果がアップするというわけです。

カーネマン氏とトベルスキー氏が検証したフレーミング効果の代表的な実験に、

「アジア病問題」というものがあります。 この実験では、アメリカでアジア病という伝染病が流行し、

死者は600人と予想されていて伝染病の対策を検討しており、

二つの対策プログラムのどちらを選ぶかという実験でした。

実験の対象者を利益を強調した表現で回答するグループと、損失を強調した表現で回答するグループに分けました。 「利益強調の内容:①200人が助かる ②600人が助かる確率は1/3、全員助からない確率は2/3」

「損失協調の内容:③400人が死亡する ④一人も死亡しない確率1/3、全員死亡する確率2/3」

利益強調では①が多かったのに対し、損失強調では④が多いという逆の結果が出ました。

意味はすべて同じですが、表現方法で人の判断が変わることが証明されています。

https://asu-yoku-laboratory.com/framing-effect