心理学や経済学を巧みに使い、無意識のうちに日常の意思決定を誘導されている事がある

プロスペクト理論とは

マーケティング戦略は企業やブランドが収益を拡大するために欠かせない戦略の一つですが、様々な方法や理論がこれまでに活用されています。 プロスペクト理論もマーケティングの代表的な理論で、日常生活においても幅広く使用されていることに気付く人は少ないです。

プロスペクト理論とは、マーケティング・販売における消費者心理の意思決定を表す重要な理論です。 不確実な状況の中で意思決定・判断を下さなければならないときに認識に歪みが起こり、事実とは異なった形で意思決定をすることを表す理論です。 人が意思決定をするときに、常に合理的に客観的な事実だけで判断するのではなく、置かれている状況が大きく作用することがあります。

 

 

ビジネスでは経済学と心理学がとても役に立つ

 

 

そこで不合理な判断をしてしまうのは、心理に歪みが生じているのが原因である、ということを意味しています。 プロスペクト理論は、二つの関数から成り立っています。 価値関数と確立加重関数の二つで、マーケティングの手法を考える際の消費者心理の指標に欠かせません。 確率加重関数は、客観的な確率が低いと過大な評価を、客観的な確率が高いと過小評価をする傾向があることを表す関数です。

宝くじを買うときに、1等の賞金が高額だと過大に期待することなどが当てはまります。 価値関数は、人が感じる価値と客観的に見た実際の価値には明確な違いがあることを表す関数です。 損失を回避したいという人の心理がこれには大きく関係しています。 損をすることは誰でも嫌ですし、そのことに過剰に反応することを損失回避性と呼びます。 つまり利益を得るメリットよりも、損をするデメリットの方が大きく感じてしまうことを表しています。

 

 

当選確率は低いとしても、期待して購入してしまう

 

 

プロスペクト理論の著者について

マーケティング戦略の理論として欠かせないプロスペクト理論は、1979年にダニエルカーネマンとエイモストベルスキーによって発表されました。 ダニエルカーネマンは、アメリカの心理学者・行動経済学者で経済学における様々な研究を行っていますが、その活動が評価されてノーベル経済学賞を受賞しています。 イスラエルのテルアビブで生まれたカーネマンは、エルサレムのヘブライ大学で心理学を学び、心理学者としての道を歩み始めます。 後にアメリカに移住し、カリフォルニア大学で心理学の博士号を取得します。

 

 

博士号を取得した

 

 

プロスペクト理論は、マーケティングの重要なツールとして活用されていますが、心理学における様々な理論もカーネマンは発表しています。 ヒューリスティクスとバイアスはその代表的な理論です。 ヒューリスティクスとは、複雑な問題を解決するために人が何れかの意思決定を行うとき、簡単な解決や法則を暗黙のうちに行っていることを指す言葉です。 この行動は経験に基づいて行うため、経験則と同じ意味で扱われます。 経験則に基づき判断スピードは速いが、自分の持つ価値観のみで判断するため偏りが大きく、認知バイアスを多く含んでいることを法則として表したものです。 この他にも、ピークエンドの法則など多くの理論・法則を発表し、経済の分野に大きく貢献しています。

 

 

 

 

有名な事例

マーケティングの分野でプロスペクト理論は、幅広く活用されていますが、実際の販売等での活用事例は数多く存在します。 消費者の購買意欲を高める効果の多い身近な手法で、今後も多くの企業が活用していくことでしょう。 代表的な事例に、返金キャンペーンを行うことが挙げられます。 ネット通販やテレビショッピングなどで、商品のお得なところやメリットなどを紹介した後に「商品に満足できなかったお客様は返金も可能です」、「期間限定で返金します」といったことをよく目にします。 このように紹介されると、購入したいけど実際に使ってみないと分からないと購入を迷っている人でも、返金が可能だったら試してみようか、と購入意欲が湧いてくる可能性も高くなります。 常連の顧客を獲得するための戦略として、返金キャンペーンと並行して商品の良さをアピールしていくことがポイントです。

 

 

 

 

さらなる事例としては、コピーライティングを活用する手法があります。 顧客の関心を引くためには、人が興味を引くキャッチコピーが欠かせませんが、〇〇限定・先着〇限定などのキャッチコピーはお得に見えるため、多く活用されています。 キャチコピーの中には損失を煽る形のものも多く、これがプロスペクト理論を活用した方法のひとつです。 例えば、期間限定で「今なら〇円が〇円に」といった広告を出し、今買わなかったら損をする、と顧客に感じさせることで購入を促します。 中には今欲しいと思っていなくても、後で買ったら損をするという心理が働き、買う人も増えてくるのです。

最近はポイントサービスを行うお店も多くなっていますが、ポイントに期限を設けるのもプロスペクト理論の活用方法として適しています。 いつでも使えると思ったら、人は貯めておいてまとめて使いたいという心理が働きますが、期限が設定されているとポイントを使わずに失うことをもったいないと思い、積極的に利用しようと考えます。 そこで消費意欲が高まり、企業側も利益を得やすくなります。 マーケティングに活用される理論としてフレーミング理論がありますが、こちらは印象操作を活用した理論であり、プロスペクト理論は人の損失回避の意識を活用した理論になります。 巧みにマーケティングに取り入れることが、事業の拡大に繋がっていくことでしょう。

 

 

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