上手な進捗管理はやる気アップにも繋がる。上手く活用しない手はない!

エンダウド・プログレス効果とは

会社勤めを続けていく中で、個人または部署としての目標・計画を立てて仕事を進めていくことは多いと思います。
設定した目標を達成するために計画を立てるのですが、目標達成にはゴールまでの道筋が明確であったり、達成可能なポイントが明確であったりするとモチベーションが高まり、達成する可能性もアップします。

エンダウド・プログレス効果という経済学上の法則がありますが、まさにゴールに向かうためのポイントが明らかだと、人はモチベーションが大きく向上するという心理的な現象を指しています。

 

 

目標達成とモチベーションは重要な関係にある

 

 

エンダウド・プログレス効果が人に起きるとモチベーションが高まりますが、これには目標が達成できそうという心理と共に、達成した目標や物を無駄にすることを嫌がる心理が働いているからです。
目標が達成できそうになり、モチベーションが向上した状態を目標勾配効果と言います。
目標勾配効果が人に起きるとモチベーションが上がり、達成に近づけば近づくほどモチベーションはさらに高まっていきます。
より目標勾配効果を高めて効果を発揮するためには、進捗を目で見て感じられるようにすることが重要になります。
進捗をグラフにしたり、達成率を定期的に明らかにしていくなどが効果的な方法です。

達成した目標や物を無駄にしたくないという心理を、損失回避効果と呼んでいます。
損失を回避したいという心理は行動心理学でも数多く検証されていますが、ポイントカードやスタンプカードなどのポイントを使わないと勿体ないと感じることなどが、これに当てはまります。
目標に近づけばモチベーションは高まりますが、初めから達成の難易度が低かったり、達成までの時間や距離が短すぎると、モチベーションがあまり上がらなくなることもあります。
安易には達成できないけど、頑張ったら達成できるくらいの適度な目標設定が、エンダウド・プログレス効果をより高く発揮するポイントになります。

 

 

進捗管理はとても大切だ

 

 

エンダウド・プログレス効果の著者、有名人について

目標を達成する可能性が高くなればなるほど、やる気(モチベーション)が高まるという心理的な行動・現象をエンダウド・プログレス効果と言います。
エンダウド・プログレス効果は、ジョセフ・C・ヌネスとザビエル・ドレーズによって研究され、2006年に論文として発表されました。
ジョセフ・C・ヌネスはアメリカで生まれ、シカゴ大学でMBAの博士号を取得しています。
ノースウェスタン大学でも学び、マーケティング、心理学、行動経済学者として数々の研究を行い、多くの論文を発表しています。

USCマーシャル経営大学院で、ビジネス、マーケティングの教授として現在も指導を行っています。
消費者心理学、マーケティング研究で大きな研究成果を上げ、優秀賞を2006年に受賞しています。
アメリカの大手企業のマーケティング、ビジネス戦略にも携わっています。
エンダウド・プログレス効果の研究成果を発表したときには経済学界でも大きな話題となり、マーケティングの権威として広く知られることになりました。
発表した論文『TheEndowedProgressEffect:HowAritificialAdvancementIncreasesEffort』に、エンダウド・プログレス効果について詳細が書かれています。

 

 

https://makitani.net/shimauma/endowed-progress-effect

エンダウド・プログレス効果/シマウマ用語集

 

 

有名な事例

目標達成までの進捗や目標の最終数値、時間などが明確になってくると人はよりモチベーションが高まり、目標到達の可能性が高くなるという心理的な効果や行動をエンダウド・プログレス効果と言います。
エンダウドは与えられたもの・事柄、プログレスは進捗、直訳すると、こういう意味があります。
エンダウド・プログレス効果について何となくはわかっても、具体的な例がないと詳しく知ることは難しいかもしれません。
論文として発表したジョセフ・C・ヌネスは、ポイントカードによる実験を例として紹介しています。
アメリカのとある洗車場で、ポイントカード配布による実験が行われました。
利用した顧客300人に対して、半数の人にはスタンプを8個集めるポイントカードを、残り半数の人にはスタンプを10個集めるポイントカードをそれぞれ配布しました。

 

 

タダであるポイントカードでも、損したくないと貯めてしまう

 

 

10個集めるカードにはあらかじめスタンプが2個押されており、顧客が実際に集めるスタンプの数は、実質同じになっています。
洗車1回に1個スタンプが押されるようになり、全部押されると洗車1回分が無料になるポイントカードとして運用されました。
この実験を続けた結果、スタンプを全部集めて洗車無料を利用した顧客の数を集計してみると、あらかじめ2個スタンプをしたカードを配布した顧客の方が、スタンプを全部貯める人が多いという実験結果が出ました。
つまり貯めるポイントの数は同じでも、進捗が目に見える形の方が意欲が高くなり、エンダウド・プログレス効果が働いていたことが証明されました。
ネットが普及している現代では、アプリにもエンダウド・プログレス効果を活用したものがいくつかあります。

学習アプリでの活用事例として、言語学習用のアプリの利用者が増えている『Duolingo』では、言語学習の習慣化のために1日1回約5問の問題が送られ、学習するように促しています。
毎日送られるこの問題では、問題の画面上にプログレスバーが引かれています。
このバーにより、問題を解いていなくてもバーが進み、視覚的に進捗が進んでいるように錯覚させて進んでいるから無駄にせず問題を解かなければいけない、という心理が働くように作られています。
プログレスバーを活用し始めてから、問題の回答率が大幅に上がったというデータも存在するそうです。
企業の管理者・上司として働いている方で、部下のモチベーションアップの案を検討されている方は、エンダウド・プログレス効果を使った改善策を立案してはいかがでしょうか。