続けることも撤退することも痛みを伴う決断となる時、決断のタイミングは重要である
サンクコスト効果とは
商売で利益を上げるためには、コストに対する意識は重要でコスト削減、コストの使い方のスキルをアップさせることは不可欠です。
人には、すでに使われているコストを意識しすぎて判断が合理的にできなくなることがあります。
使われたコストを意識しすぎて意思決定の判断を誤る現象や行動を、サンクコスト効果と呼んでいます。
サンクコストは埋没費用という意味があります。
既に費用として払っており、取り戻すことが不可能なコストのことをサンクコスト(埋没費用)と言い、金銭はもちろんですが時間や労力なども含まれます。
つまりサンクコスト効果とは、埋没費用は取り戻せないのですが、このコストを取り戻せるような利益を得ようとする心理的な現象・行動を指します。
サンクコスト効果を強く感じてしまうと、合理的に冷静な判断ができなくなる可能性が高くなります。
損失するリスクが高いにも関わらず、ギャンブル性の高い投資や事業を推進したりする場合は、サンクコスト効果の影響を大きく受けている恐れがあります。
同じような意味を持つ言葉として、コンコルド効果というものがあります。
ビジネスの中ではよく使われており、馴染みがあると感じる人も多いでしょう。
1960年代に世界最速の旅客機として大きな注目を集めたコンコルドは、開発に4000億円というコストがかかってしまい、黒字転換することがほぼ不可能という試算がされました。
しかし黒字にできないとわかりながら投資金額を惜しんでプロジェクト運用を続けた結果、1兆円を超える大きな赤字を計上する結果となりました。
サンクスコスト効果と同じで、埋没費用を惜しんだことが赤字を膨らませる大きな要因となったことで、コンコルド効果は広く知られることになります。
コンコルド効果とは? 由来やサンクコスト、事例や対策、認知バイアスと対処について/カオナビ 人事用語集
サンクコスト効果の著者、有名人について
サンクコスト効果は、音速旅客機コンコルドの開発事業の失敗によって起こった大きな損失が由来になっています。
当初は、コンコルドをそのまま名前にしたコンコルド効果という呼び方が一般的でしたが、様々なビジネスシーンにおいて、取り戻すことのできないサンクスコスト(埋没費用)が誤った判断を起こす要因になることから、サンクスコスト効果と呼ぶようになりました。
サンクコスト効果を活用したビジネス本も数多く出版されていますが、日本ではPHPビジネス新書でサンクコスト時間術という本が出版されています。
この本では、振り返っても何も得ることができないものに囚われて時間を無駄にしていることを問題とし、時間の活用方法について説いています。
時間には今と未来しかなく、過去の時間を考えてもしょうがない、今できることを判断して最善の策を打つことが、ビジネス成功のポイントであると述べられています。
この本の著者である斎藤広達氏は、経営コンサルタントとして活躍されている方で、アメリカのコンサルティング会社やメガバンク勤務などを経て独立しています。
数々の企業の事業再生や企業買収に携わり、大きな成果を上げてきました。
これまでのコンサルティング経験を活かしたビジネス書を多数出版し、サンクコストによるロスを検証した時間術は多くの企業も活用しています。
有名な事例
合理的な判断・行動をすればリスクが少なくなるとわかっていても、人は様々なバイアスによって判断を誤ります。
最初にかかってしまった投資分が、その後の判断・行動に悪影響を及ぼすことをサンクコストと呼びますが、ビジネス以外の日常の中にもサンクコストは存在します。
本を購入したときにも、サンクコスト効果が起こる場合があります。
例えば、話題になっている新作のビジネス書が販売され、金額的には高額でしたが期待して購入しました。
しかし読み始めてみると自分が思っていたような内容ではなく、読み続けてもあまり意味がないように感じました。
この場合、読むのをやめた方が時間を無駄にせず合理的ですが、高いお金を払って買ったというサンクコスト効果が働いてしまい、とりあえず最後まで読むという誤った判断をしてしまいます。
結果的に何も得るものはなく、時間だけを無駄にしてしまうことになります。
転職のシーンにも、サンクコスト効果が大きく表れることがあります。
例えば、専門的な知識が必要な国家資格を取得するために専門の大学に入学し、資格を取得して専門分野の企業に就職しようと思い、学生時代の時間をその勉強に費やしてきました。
資格を取得し、希望していた職種に就職することが晴れてできたのですが、数年働くうちに自分が思い描いていた職業ではないと感じるようになります。
客観的に周りが見えるようになると、他の職種にも興味を持って思い切って転職することも考え始めます。
このときにサンクコスト効果が強く働いてしまうと、転職すると今まで費やした費用と時間が無駄になると思い、仕事に興味を失っているにも関わらず現在の仕事を続けてしまうことになります。
もちろん転職することがすべて正しいわけではありませんが、自らに適した職業を見つける可能性を摘んでしまっているかもしれません。
サンクコスト効果は、合理的な判断を誤らせる可能性のある行動パターンです。
サンクコスト効果に陥らないようにするためには、いくつかの対策があります。
物事を考えるときにフラットな状態ですべてを判断することが、サンクコスト効果の回避に繋がります。
もちろん、これができないから多くの人がサンクコスト効果に陥っているわけですが、常にゼロリセットして物事を考える習慣をつけることは重要です。
この他にも自分だけで考えるのではなく、第三者の客観的な意見を聞くことも重要です。
自分だけで考えると偏った考えになることが多く、他人からの意見を聞くと違う視点で物事を考えるきっかけとなります。
サンクコスト効果は、誰にも起きる可能性がある行動パターンです。
ここにあるようなことを参考にして、囚われないように考え行動することがポイントになります。
あなたはサンクコスト効果の影響をどれだけ受けやすいか/Harvard Business Review