マーケティングやプロモーションに携わる人は知っておくべき極端回避の法則
極端回避の法則とは
ビジネスに活用される人の心理的な法則や理論は数多く存在しています。
行動経済学として多くの研究が行われていますが、3段階に分かれた選択肢がある場合、
多くの人が真ん中を選ぶという心理効果のことを『極端の回避性』と呼びます。
松竹梅の法則とも呼ばれる極端の回避性は、
選択肢が内容によって3つに分かれている場合は真ん中を選ぶことが多い、という法則です。
例えば、お昼を食べに行ったときに、お店の日替わり定食が松・竹・梅から選べるとします。
この時に一番選ばれるのは真ん中の竹になりますが、この法則性は多くの場面で登場します。
人は何故真ん中を選ぶのかというと、リスクを負いたくないという心理が働いていることと関係があります。
安いものを選ぶと、その商品やサービスの良さを十分に得られないと感じます。
逆に高すぎると自分が損をするような錯覚を感じ、一番妥当と思われる真ん中を選ぶ人が多くなるのです。
定食を選ぶときでも、竹であれば損をせず質もいいようなイメージが働き竹の定食を選ぶ人が多くなるわけです。
しかし、どんな場合でも真ん中を選ぶのかというとそうではなく、
価格設定や内容によって変化することがあります。
設定を工夫することで、最も選んでほしいものに導くことも可能になるのです。
極端回避の法則の著者、有名人について
三段階の選択肢から選ぶ時、多くの人は真ん中のものを選ぶという心理の法則を極端回避の法則と呼びます。
極端回避の法則は、松竹梅の法則、ゴルディロックス効果などの呼び方をされることもありますが、
行動経済学のフレーミング効果も同じ意味を持つ言葉です。
フレーミング効果は、行動経済学の権威ダニエル・カーネマンによって提唱され、
マーケティングで後に多く活用されることになります。
ダニエル・カーネマンはイスラエルのテルアヴィブで生まれ、
ヘブライ大学で心理学を学び、心理学、行動経済学の道を進むことになります。
その後、アメリカに移住し心理学の博士号を取得して、
心理学・行動経済学者として数々の理論・法則を提唱します。
行動経済学者としての評価を確かなものにしたプロスペクト理論は、
1979年にエイモス・トベルスキーと共同で大勝しました。
フレーミング効果(極端回避の法則)も、このプロスペクト理論の中の一つです。
人は物事を判断するときに過去の経験や経験則に基づいて判断を行うため、
合理的な判断するのではなく、一定のバイアスを含めた判断をすることも提唱しています。
この認知バイアスが人の判断に大きく関わることも、マーケティングに活用されています。
この他に、人の経験の快苦に関する記憶は、
ピークの時と終了の時の状態で決まるというピーク・エンドの法則も提唱しています。
このように数多くの理論・法則を提唱してきたことが評価され、2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。
有名な事例
飲食店のコース料理や定食に多く使われる松竹梅という3つの選択肢から
松竹梅の法則とも呼ばれる極端回避の法則は、経済活動の中でも広く活用されています。
飲食店では、商品サイズ・価格帯に多く使われています。
例えば、ファストフード店でドリンクやサラダ、ポテトなどを選ぶときに、
S・M・Lの3つから選ぶようになっているケースは珍しくありません。
これにLLやXLなど、種類が多くなりすぎると選ぶのが面倒になりやすく、3つに絞っています。
価格帯に関しては、定食やコース料理を松・竹・梅の3つにするところが多い傾向にあります。
メインに提供したい金額を真ん中に設定していますが、これは一番安いものだとケチに思われるかもしれない、
一番高いものだと見栄を張っているように見られるかもしれないという、
極端性回避の心理が働いていることを活かしています。
マーケティングの手法として活用する場合、一番売りたい商品を真ん中に設定します。
この時の価格設定は、比率を6:3:1に設定すると、極端回避の法則がより効果的に活用することができます。
行動経済学✕ファンドレイジング―3.アンカリング効果と極端回避性/株式会社ファンドレックス
売りたい商品をプレゼンするときにも極端回避の法則は活用されますが、注意点が2つあります。
一番重要なのは、売りたい商品を2番目に紹介することです。
最初に一番高い商品、2番目に売りたい商品、3番目に一番安い商品の順に紹介するのが最も効果的です。
これは最初に説明された数値を基準として、後の数値を判断するという人の心理から考えられた方法です。
最初の商品の説明を聞くと、人は物はよさそうだけど高いと感じます。
2つ目の説明を聞くと、質は少し下がるけど悪くはないと感じます。
3つ目は、ちょっと安すぎて質が心配と感じ、一番無難な2番目を選ぶ人が多くなるということです。
他にも、3つの選択肢の内訳をメニューやカタログなどに明記し、顧客側が選びやすくする方法も有効です。
このような形で、極端回避の法則は多くの企業のマーケティング戦略に活用されています。