スタンダードを好む!人の判断基準を学び、デフォルト効果を活用してみよう
デフォルト効果とは
「この数値は(この演出は)デフォルトです」などという文章や動画をよく見かけますが、
デフォルトの意味を知る人は少ないでしょう。
デフォルトとは、初期値(初期設定数値)のことで、基準・標準という意味も持っています。
物事を進める際の基準となる数値を設定することで、
計画の立案をスムーズに行うために必要なものとして、ビジネスの世界では広く使われています。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%87%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88-6393
デフォルトとは/コトバンク
行動経済学では、このデフォルトの数値によって、人の意思決定がされやすい傾向があると考えられ、
その非合理的な行動をデフォルト効果と呼んでいます。
より良い選択肢が他にあったとしても、人はデフォルト(初期設定・基準値)の方を選ぶ傾向が強くなっています。
何故デフォルトに人は惹かれていくのかですが、
デフォルトは基準・標準でリスクが少ないという感情が働くことが大きく影響していると言われています。
「デフォルト」っていつ使う? – 全く異なる3つの意味を解説【ビジネス用語】/マイナビニュース
リスクを回避する現状維持バイアスが人の中にはあり、
より良い物があったとしてもリスクがあるかもしれないというリスク回避の心が勝り、デフォルトを選びます。
経済学やマーケティング、コンサルティングでは、
経営者に「現状に満足せずリスクを恐れず新しいことに挑戦しなさい」と真逆のことを提案しますが、
これは変化を恐れると現状で満足してしまうという人の心理を変えることが成功に近づくことを表しています。
デフォルト効果が起こる仕組みとしては、損失回避をしたいという
人の心理デフォルトに対する安心感が大きく関係しています。
変化の少なさが安定に繋がるという考えを変えていくことが、ビジネスでの成功に繋がります。
デフォルト効果の著者、有名人について
初期に設定された数値を基準にして物事を判断する人の心理的な行動を、デフォルト効果と呼んでいます。
デフォルト効果によるバイアスがかかることを現状維持バイアスと呼びますが、同じ意味合いを持つ言葉として、
行動経済学・心理学の分野では活用されています。
https://three-philosophers.com/uiux/behavioral-economics/default-effect.html
デフォルト効果/THREE PHILOSOPHERS
デフォルトによる現状維持バイアスを世界に対して提唱したのは、リチャード・H・セイラー教授です。
セイラー教授は、行動経済学の第一人者ダニエル・カーネマン氏との共同研究・実験により、
多くの行動経済学の理論を提唱しています。
1945年にアメリカのニュージャージー州で生まれ、大学で経済学を学び経済学者の道を歩みます。
1995年にシカゴ大学の教授となり、教鞭を取りながら数々の理論を提唱しています。
1980年代後半から1990年代初めに経済誌にコラムを連載し、
過去のミクロ経済学理論に反した説を唱えて注目されました。
現状維持バイアスに関する論文は、キャス・サンスティーンとの共著でも提唱しています。
ダニエル・カーネマンが提唱したプロスペクト理論の中にも現状維持バイアスに関する記述があり、
この検証ではカーネマン氏と協力をして研究を行っています。
共に研究を行ったダニエル・カーネマンは2012年にノーベル経済学賞を受賞しましたが、
それから遅れること5年、2017年にセイラー氏もノーベル経済学賞を受賞しています。
行動経済学が現代のビジネスに深く関わるようになったのには、セイラー氏の研究が大きく関わっているようです。
有名な事例
初期の状態や標準値・基準を人は重んじて変化することを嫌う傾向がありますが、
このような行動や心情をデフォルト効果と心理学では呼んでいます。
大きなメリットが得られる可能性があっても、様々な変更やチャレンジにはリスクがあり、
変更に要する労力やリスクを想像して現状を維持したいと考えるのは、人としてある意味普通のことになります。
人がデフォルト効果に導かれている具体例は、たくさんあります。
公的なアンケートや質問では、選んでほしい方を初期設定にするオプトイン方式を多く採用しています。
これは初めからハイになっているものを、
敢えて違う選択にすることを本位としない初期設定・現状を維持する人の心理を活かしたもので、
臓器提供の可否の書式では初期設定を提供することになっています。
新しい商品やサービスを定着させるために無料お試し期間を設定するのも、
デフォルト効果を有効に活用しています。
一定期間無料であれば試してみようと考える方は多いですが、無料期間が過ぎても、
それまでのサービスに慣れていると手放すことが勿体なく感じ、
お試し期間だけのつもりが有料になっても継続してしまったという人は少なくありません。
動画や音楽の配信サービスが世の中に定着したのも、
無料お試し期間をうまく活用したことが大きく影響しています。
新商品のカタログや申込書に返品・返金保証を設定することも、デフォルト効果の一つです。
初めて購入するときは、その商品で失敗したくないという意識が働き購入をためらう人は大勢います。
しかし効果が感じられなかったり、サービス・内容に不満があったら返品・返金が可能となっていたら、
とりあえず試してみようと考える人は増えてきます。
この返品・返金保証には設定する側に大きなリスクがあるように感じますが、
実際には人に働く返報性の原理や返品・返金手続きの面倒さから返品・返金申請をする人はごく稀にしかおらず、
マーケティング手法として多く活用されています。