人の行動を研究することで、マーケティングに活かせる様々な心理が明らかになる。

フレーミング効果

マーケティングにおいて行動経済学における人の行動の研究は、とても重要なポイントです。
様々なアプローチの手法がありますが、フレーミング効果は幅広い業種で取り入れられています。
フレーミング効果とは同じものやサービスなどでも、表現方法を変えるだけで相手の受け取り方が大きく変わることに基づいた理論として知られています。

人はいくつかの選択肢がある場合には、絶対的評価よりも相対的評価を重視して選択する傾向が強いと考えられています。

表現する方法を変えると、人は時に非合理な判断をくだすことがあるというのは行動心理学でも理論づけられていますが、このフレーミング効果はマーケティングに活かされていると言われています。
例えば、ある商品が高級品か低価格の安い商品かの2択に分かれたときの比率は約50%になりますが、その二つの上に最高級な商品が加わると、元々高級と考えられた商品が50%で、その他の2つが約25%に分かれます。
選択肢が2つであれば、価格で選ぶか品質で選ぶかで絶対的な判断をすることができますが、選択肢が3つになると絶対的な判断ができずに相対的な判断をするため、真ん中を選ぶ確率が高くなると考えられます。
人間が相対的な判断を下すように、フレーミング効果で変えることが可能になると推察されます。

ザイガルニックテクニック

恋愛のテクニックとしても活用されることが多いのが、ザイガルニックテクニックです。
ザイガルニックテクニックとは人間は達成した成功体験よりも、達成できなかった失敗体験や未達で中断されたような事柄の方に強い印象を持ち、記憶している現象のことです。
つまり人は未完成のものに対する記憶の方が完成されたものよりも記憶として残りやすい、ということになると考えられます。
例えば恋愛に関して告白したけど駄目だったことや、別れを告げた瞬間に上手くいったときよりも上手くいかなかったときの記憶の方が鮮明になることが推察できます。

音楽の世界でも、ラブソングと言われるジャンルの大半は片思いや失恋を題材にしている、というデータも存在しています。
これは音楽業界が、ザイガルニックテクニックをマーケティングに活用していることの表れと考えられます。
未完成なことの記憶が強いというのは、逆に言えば完成させたいという欲求が強くある、ということを表していると推察されます。
コマーシャルでよく使われるザイガルニックテクニックの例として、映画公開前のコマーシャルや新商品のコマーシャルで商品のポイントをアピールした後やドラマティックな展開などをアピールした後に、「続きは映画館で」や「続きは発表会で」など、未完のままコマーシャルを終えることがあります。
これは未完成で結末が気になる、というところに重点を置いた解かりやすい例と考えられます。

心理学はビジネスにもプライベートにも活かせる

認知的不協和

認知的不協和も、マーケティングに活かされることが多い傾向にあると言われています。
認知的不協和とは、自分自身が矛盾している新事実を突きつけられた状況で感じる、不快な感情のことを言います。
この不快な感情を緩和するために、人間は行動や態度を変化させる傾向にあり、この論理をマーケティングに活用していると推察されます。
「新事実そのものを否定する」または「自分自身の態度・行動を変更させる」のどちらかを解消するために、人間は選んでいると考えられます。
どちらかを否定することによって、起きている矛盾を解消させようということです。

分かりやすい例を喫煙者に例えて挙げると、煙草を吸う人の多くはリラックスや気分転換のためにと言いますが、近年は肺ガンになるリスクが高いというデータが発表され、喫煙者が減少する傾向にあります。
喫煙者が肺ガンになるという不快な新事実に対して行う行動は、基本的に煙草を止めるか肺ガンになるリスクが高いという新事実を否定するかの2択になると考えられます。
ガンの死亡者は、全体では肺ガンがNo.1ではなく、喫煙者でも長生きの人もいれば、喫煙をしていない人でも早く亡くなる方もいるという事実を追加して、喫煙を肯定する行動を取ることがあります。
この肯定する行動を起こす心理を利用することが、マーケティングで大きな効果を出す可能性があると推察されます。

シャルパンティエ効果

小売店が最も多く活用していると思われるものに、シャルパンティエ効果があります。
この言葉を知らないという人でも、実際には目の当たりにしていることが多いと考えられます。
シャルパンティエ効果とは、頭の中でイメージした内容だけで大きさ・重さ・金額などを判断することを表しています。
例えば広い敷地のことを東京ドーム何個分と表現することでイメージさせることなどが、シャルパンティエ効果だと言われています。
フランス人医師のシャルパンティエが最初に実験をしたことから、名づけられたと推察されます。

マーケティングでこの効果を活用する場合には、ビタミンCが多く含まれる商品の宣伝文句でビタミンC2000mg配合、レモン100個分のビタミンC配合と書かれていた場合にどちらも配合量はほぼ同じですが、レモン100個分と書かれていた方が多く含まれているような錯覚をすると考えられます。
物に例える方が、より多く見える方を宣伝に使った方が効果は高いということになります。
お店の商品の表示でも、1000円と980円では金額はほとんど変わりませんが、980円の方がすごく得した感じになることも、シャルパンティエ効果の代表的な例と考えられます。