チャレンジして得られるメリットよりも、変わらない事で損を回避したいという心理について

現状維持バイアスとは

成功を収めたスポーツ選手や経営者が、現状に満足せずリスクを恐れず

チャレンジしたことが成功に繋がったと、後に語ることがよくあります。
しかしリアルに生活や仕事では、リスクがあるとわかっていて

チャレンジをすることは容易ではなく、現状維持を良しとする現実が存在します。

人には無意識に変化することに抵抗を感じ、現状維持することを求める心理があり、

その行動を「現状維持バイアス」と心理学、経済学の世界では呼んでいます。
大半の人には、平穏無事な安定した状況を続けたいという気持ちがあると言われています。

 

 

変化することは難しいと考えがちだ

 

 

確かに個人的に何のトラブルもないのに、わざわざ変化を求める必要がないと考えるのは当然で、

現状維持を求めることが決して悪いわけではありません。
しかし、ここでいう現状維持バイアスは客観的に物事を見ず、

これまでの自らの経験や考えだけで偏ったものの見方(バイアス)によって判断することを意味しています。
つまりフラットにすべてのものや出来事を見ず、現状を維持することが正しいと

自分の心の中で思い込み結果を導きだそうとするのが、現状維持バイアスというわけです。
そのため仮にチャレンジしたり、変化をすることで大きな成果が得られるかもしれないのに、

現状を維持することにこだわり、チャンスを逃す結果に繋がる可能性があります。

現状維持バイアスの心理が強くなってしまうことで雇用損失の大きなデメリットを伴うため、

現状維持バイアスに陥らない工夫が必要になります。
もちろん、闇雲にチャレンジすることは決して勧められるものではありませんが、

失敗を恐れるあまり成功が遠ざかるような取り組みは避けることが賢明です。
日本人は、投資することよりも貯蓄する傾向が強いと言われていますが、

これは日本人に現状維持バイアスの傾向が強いことを表す顕著な例だと言われています。

 

 

 

 

現状維持バイアスの著者、有名人について

現状を維持していれば安定した平穏な状況を続けることができると考え、

改善やチャレンジを避ける人の心理的な行動を現状維持バイアスと呼びます。
現状を変えないことのメリットばかりを考えてデメリットにバイアスをかけてしまうことは、

チャンスや成功を自ら遠ざけるようなものですが、人には本質的にこのような心理が存在しています。
現状維持バイアスは、1991年にレイモンド・ハートマンが研究して提唱した理論と言われています。
当時ハートマン氏は、現状維持バイアスを検証するためにある実験を行いました。
カリフォルニア州の、とある電力会社から電力の供給を受けて生活をしている人を対象とした実験です。

 

 

実験も行われている

 

 

この頃のカリフォルニア州の電力プランには、AプランとBプランの二つが存在していました。
AのプランはBよりも信頼性が高い反面、高額な電気代が掛かります。
Bのプランは逆に信頼性は低くなりますが、電気代はAよりもお得な金額です。
そこでハートマン氏は、A・Bそれぞれの加入者に対して、信頼性・料金の違う6つのプランを提案します。
この6つの中には、現在利用しているA・Bのプランも含まれていました。
その結果、Aの加入者の約60%、Bの加入者の約58%が現在加入しているA・Bのプランを選びました。
つまり多くの人は新たなプランによる変化よりも、

現状を維持しようとする気持ちが強いということがわかる結果になりました。

 

 

https://bizble.asahi.com/articles/2021062300039.html

判断に悩んだとき、選ぶべきは「現状維持」か「変化」か 実験からわかった結果とは?/bizble

 

 

有名な事例

人には基本的に得したいという気持ちよりも、損をしたくないという気持ちの方が強くなる心理的傾向があります。
この損失を回避しようとする心理を、「現状維持バイアス」という風に呼んでいます。
確かに得をした喜びも大きいと思いますが、損をしたときの精神的なダメージは、

その喜びを上回るかもしれません。

 

 

恐怖が先行して行動を起こせない人は多い

  

  
行動経済学の理論として提唱されたプロスペクト理論にも現状時バイアスについて書かれていますが、

日常生活・マーケティングの中にも様々な例が存在します。

日常生活では、お昼ご飯の時に同じものを選んでしまう傾向がある人は、

現状維持バイアスにかかっていると思います。
違うメニューに興味はあっても、「食べてみて失敗だったらいやだ」という心理が

同じものを選ぶ要因になっています。
転職を思い切ってできないというのも、現状維持バイアスの影響があると言えるでしょう。
現状に不満があって転職したいと思っていても、

いざとなると次の仕事先が合わなかったらという不安の方が強くなると、転職を断念してしまいます。

マーケティング戦略に現状維持バイアスの心理を活用している取組は多く見られます。
ネットのサービスなどで、登録して1ヶ月は無料でお試しできるものが多くあります。
AmazonプライムやCS放送のWOWWOWなど、音楽や動画配信サービスのキャンペーンでよく見かけますが、

これは無料期間が終了しても、そのまま継続する心理が働くことを狙った戦略です。
家を購入したら家具がセットになったり、家電品に使用する消耗品がセットでサービスされることも、

現状維持バイアスを活用した事例の一つです。

 

 

https://lab.kutikomi.com/news/2020/11/09/holdingxeffect/

保有効果とは?「手放せない心理」をマーケティング施策に活かす、現状維持バイアスについても紹介/口コミラボ