少しの工夫で結果が大きく変わるナッジを活かした事例集を学ぼう

松竹梅メニューはナッジ理論の活用

ひじを軽く突く行為のように、ほんの些細なアプローチによって人の行動変化を促す戦略・理論をナッジ理論と呼んでいますが、行動経済学の取り組みとして多くの成功事例が報告されています。
飲食店のメニューにナッジ理論を取り入れているお店も数多く存在しますが、人気のうなぎ屋さんが示したメニューは代表的な成功事例として知られています。
うなぎ屋さんの人気メニューと言えば、うな丼やうな重になると思いますが、値段に違いのある松・竹・梅をメニューにしているお店が大半です。

最初にこの3つの金額を考えたお店は、ナッジ理論を知っていたかどうかは定かではありませんが、結果的に人の行動変化を利用して成果を上げています。
仮に「松4000円 竹3000円 梅2000円」にメニューを設定していたとして、約半数のお客さんは真ん中の竹の3000円を選びます。
イメージ的には、一番リーズナブルな2000円の梅が一番になりそうな気もしますが、なぜ真ん中の竹が半数を占めてしまうのでしょうか。
これには人の商品に対する印象や思い込みがバイアスとして働く、という心理が大きく影響しています。

 

松竹梅設定は色んなところで採用されている

  

そして3種類の金額に分かれている場合に「一番安いものは質的に低いかも」という心理と、「一番安いものを頼むのが格好悪い」という良い格好をしたいという心理の二つが働きます。
逆に一番高いものの場合は、贅沢すぎるとか見栄っ張りに思われるかもというような心理が働き、一番無難な真ん中のものを選ぶ人が多くなるということです。
この例のように、上・中・下の3つの選択肢の場合もやはり中を選ぶ人が一番多くなる、という結果が表れています。
この一連の判断を見ても人は合理的ではない判断をすることがあり、ナッジ理論をマーケティングや広告戦略に活用することがビジネスの成功に繋がります。

 

https://cinq.style/articles/2570


選択肢は3つ作るべし! ビジネスを有利にする「松竹梅の法則」/Cinq

 

健康促進に一役かったナッジ理論

行動経済学の一つの理論として、ナッジ理論を活用して成功している企業や自治体は世界中に存在しています。
日本でも多くの事例がこれまでに紹介されていますが、海外での成功事例にも、様々なシーンに活かせるものがあります。
北欧の国スウェーデンのストックホルムで取り組まれたナッジの事例は、とても発想がユニークでしたが大きな成果を上げました。
ストックホルムでは、運動不足により肥満になる人や体調不良を起こす人が増え、適度な運動を推進する取組が国と市により行われていましたが、思うような成果は上がっていませんでした。

  

肥満はビジネスに悪い影響を与えるい事がある

  

そこで実施されたのが、ストックホルムの地下鉄の駅の階段をピアノの鍵盤のようなデザインをして、階段を歩くとピアノの音が鳴るような仕掛けです。
ピアノの鍵盤階段を導入する前は、ほとんどの人がエレベーターを使用していましたが、階段を上り下りするたびにピアノの音が聞こえるようになると、多くの人が興味を持つようになりました。
その結果、階段の利用者が導入以前よりも約70%近くまでに増えたそうです。
階段を使うよりもエレベーターを使う方が楽ですが、使う人が少なかった階段を上り下りする行為が、ピアノの鍵盤を踏んで音を出すという楽しい行為になったことで、劇的に利用者が増えたというユニークな事例です。

 

 

人の心理を上手く活用したナッジ理論

アンケートや調査書類などに「はい・いいえ」や「する・しない」などを記入する場合に、どちらにするか迷ったり、あまり興味のないものを選ぶときに最初の方を選択する、といった偏った傾向が人にはあると言われています。
ナッジ理論は、その偏りを活用する理論ですが、行政の取り組みにも活かした事例はたくさんあります。
私たち人間の内臓は機械で作ることはできませんので、臓器疾患を持つ人に内臓を移植する他に方法はありません。
人口心臓などのようなものもありますが、全ての機能を果たすものはないという意味です。

厚労省や内閣府の調査によると、日本では「臓器提供をしてもよい」と調査で記載する人は約13%で、世界的にも少ない方だと言われていました。
しかし、実際に臓器提供を求められた場合に、してもよいと思っている人は約40%に上るというデータが存在します。
では、なぜ日本では臓器提供の意思を用紙に記入する際に、しない方を選ぶ人が多いのでしょうか。
これには用紙や電子上のアンケートファイルに記入する際に、「臓器を提供しない」という方が先になっていることが、「しない」を選ぶ大きな要因となっているようです。

 

意外なところで結果が変わる

 

一方で、ヨーロッパのオーストリアやフランスでは「臓器を提供する」の方が先にあり、同意する人の割合は100%に近い数値になっています。
人間には「現状をできるだけ変えずに維持したい」という考えが基本的にあり、日本のように「臓器を提供しない」が先にあると、「臓器を提供する」を答える人が少なくなってしまいます。
この現状を変えたくないという人の傾向を理解していると、サービスの提供の時に選んでほしい方を初期設定にしておくことで、成果を上げる可能性を高くすることができます。