まだまだあるビジネスに活かせる人間の行動心理学。成長したくても変化を恐れる人間の心理。

マッチングリスク意識

経済学の考え方に、人間の行動心理を取り入れたマーケティング戦略を行う企業が近年は多くなっていますが、この考え方を行動経済学・行動心理学と呼んでいます。
ネットが普及して、ビジネスそのものもスタイルも大きく変わっている現代では、人間の心理を考えた取り組みは欠かせないと考えられます。


マッチングリスク意識を戦略時に活用することも、近年の戦略の一つです。
マッチングリスク意識とは、人が初めて商品・サービスを購入しようと考えたときに、様々な不安要素をイメージして購入を止めてしまう要因となる内容の一つです。

直感的に物事を判断する人は、このマッチングリスク意識をあまり感じていませんが、多くの人は価格・品質・安全性・デザイン等様々な方向からメリットやデメリットを検討しています。
そして本当に結果が満足できるものになるのかについて熟慮をしますが、この心理状態がマッチングリスク意識そのものになります。
つまりマッチングリスク意識が働かないような情報発信・行動をサービス・商品を提供する側ができるかが、利益に繋がると考えられます。
マッチングリスク意識を低くさせるには、如何に損失が少なく得するかを印象付けられるかがポイントと言えるでしょう。

返報性の原理

マーケティングで多く活用されている行動心理学の考え方としては、返報性の原理があります。
返報性の原理とは、解かりやすく言えば他人から何らかのプラスになるような施しやサービスを受けたときに、それ相応のお返しをしないと申し訳ないという心理が働くことです。
日本人が古くから持つ義理人情による行動と考えると、解かりやすいと思います。
相手との関係性にもよりますが、一般的にはサービスや施しを受けたときに何かをお返ししなければ、という心理が働くのは健全な考えです。
返せないときには、逆にプレッシャーを感じる人も多いのでは、と推察されます。
具体的な例を挙げると、バレンタインデーやホワイトデーの二つのイベントにおける行動で考えられます。

バレンタインデーには、企業内で女子社員が同僚や上司にチョコレートを配る、いわゆる義理チョコなどはお世話になった人へのお返しという意味で返報性の原理で働いています。
一方のホワイトデーにおいて、チョコレートをもらったお返しをすることも、同じく返報性の原理が働いた行動と考えられます。
ビジネスにおいて、この原理を活用している例としては、スーパー・デパートなどの食品売り場の試食があります。
試食を担当する人から勧められて食べたときに、試食だけで買わないことに対して抵抗を感じる人は多いと思います。
この心理は、返報性の原理として最も解かりやすいのではないでしょうか。

バレンタインデーやホワイトデーなど、感謝の気持ちもビジネスになる。

権威への服従原理

企業内での論理として、大きく働く心理的な行動として知られている権威への服従原理についてです。
権威への服従原理とは、経済学・心理学の世界ではミルグラム効果とも呼ばれています。
これは多くの人に見られることですが、権威や肩書に人が弱いことが行動に現れることを指しています。
例えば、経済の専門家と呼ばれる学者や経営者が話す内容であれば、信憑性がないことや曖昧な結論であっても妙に納得してしまうことが、これにあたります。
その時は正しいと思っていますが、この場合の多くは後で冷静に考えると怪しいことも珍しくはない、と考えられます。

つまり専門家・優良企業の管理職・経営者という風に聞いたり紹介されただけで、その内容にかかわらず妄信的に行動してしまう法則を、全般的に権威への服従原理と呼ぶと推察されます。
会社内で強い権限を持つ役員などに言われると、理不尽かを考えずに行動してしまう社員が多いのは、まさにこの原理の代表的な例でしょう。
マーケティングにおいては、この心理を活用したCMが多い傾向にあります。
例えば健康食品などでは、商品の監修や共同開発者に医学博士や大学教授などの肩書を持つ人の名前を出したり、CMのキャラクターに使ったりすることが多いのですが、これも権威への服従原理を活かしたマーケティング戦略と推察されます。

現状維持バイアス

人間の心理として最もかかりやすいと考えられるのが、現状維持バイアスです。
現状維持バイアスとは、人が大きな変革・変化や知識・経験のない未知なるものを、できるだけ避けて現状を維持しようとする心理的な行動のことを言います。
バイアスには、偏見・先入観という意味がありますが、変化をとにかく嫌うことを指します。
自分の持っている価値観にそぐわないものは、すべて排除して偏った見方を時に人間はしてしまう、と行動心理学では考えられています。

これは人間が本来持つ、損失を回避しようとする心理が強く働いている状態と考えられます。
つまりリスクを冒さないと得られない利益や満足度よりも、損失や失敗からくる苦痛の方が辛いと考える心理作用があることを表しています。
大企業でありがちなことですが、これまでに実績も経験もない新規事業を立ち上げようとしたときに、明らかに成功する可能性があって、その事業が幹部によって却下されることなどが悪い例です。
成功したサービスや商品がロングヒットになればなるほど、この傾向は強くヒット商品が永遠に続かないと言われるのも、この心理が要因だと考えられます。