人間の行動、心理を分析することで大幅な売り上げアップや経費削減を実現できる

ナッジとは

人間の行動を分析し、経済的な効果を研究・検証することを行動経済学と呼んでいますが、経済効果を高める考え方としてナッジが近年特に注目され、活用されています。
ナッジとは、直訳すると「ひじで軽く突く」という意味になりますが、行動経済学では「人間の行動を科学的な分析に基づき、変化させる戦略」のことを言います。

ナッジの主となる考え方・コンセプトは、2008年に著名な行動経済学者リチャード・セイラー教授(シカゴ大学)とキャス・サンスティーン教授(ハーバード大学)の二人によって発表されました。

 

行動分析の著書は面白い。

  

人の選択構造を行動経済学に活用した画期的な戦略として、発表当時は大きな話題を集めました。
選択構造というのは選択肢を提示する形のことで、この構造を検証することがナッジの大きなポイントになります。
私たちは、様々な場所やシーンで自ら意思決定を行いますが、日常の他愛もないことの決定でも、人生を左右するような大きな決断を下すような決定であっても、すべてにおいて選択構造が働いています。
人間は長い年月や経験によって先入観を形成していきますが、この先入観を利用した意図的な選択構造が存在しています。

スーパーマーケットは意図的な選択構造の例として、分かりやすいものが多くあります。
売れ筋の商品を目に入りやすい高さに並べるのはスーパーマーケットの定番の戦略ですが、お買い得品の広告やポップなども選択構造を利用した戦略の一つです。
入口の近くにセール品を大量に並べたり、焼き立てのパンの匂いで購買欲を強くさせたり、おいしそうな盛り付けの弁当や総菜を並べることなども、意図的に作り出されたものです。
ナッジは人間が誘惑に弱く、意図的に作られた選択構造にハマること、現状維持を好みやすいことなどを理解した上で、より正しい行動を取るように導く考え方と理解しましょう。

 

セールだからと言って買い過ぎは注意だ

 

ナッジの有名事例

人間の行動を科学的に分析するナッジを活用した事例は世界中に数多くありますが、最も有名なのがオランダの男子トイレに描かれたハエの絵の話です。
オランダのアムステルダムにあるスキポール空港は、経営状態を健全にするために様々な経費削減の取り組みを行っていました。
その中で、男子トイレの維持管理費の高さが気になり調べたところ、床の清掃費用が高額になっていることが分かります。

 

画期的なアイディアで大幅な経費削減に成功した

 

男性がトイレで用を足すときに便器や床を汚すことが多く、キレイな状態を維持するために頻繁に床と便器を清掃しなければならず、清掃費用が必要以上にかかっていました。
そこでトイレに床汚れを減らすための改善として実施されたのが、小便器の内側にハエを一匹描く方法でした。
ただ一匹のハエを描くという改善は、トイレの清掃費用を約8割も減少するという大きな効果を生み出します。

何故、ハエを一匹便器の中に描くだけで清掃費用が削減できたのかというと、ここに人の選択構造を利用したナッジ的な戦略がありました。
ハエが便器の中に描かれていることは、的になるものがあると人は狙いたくなるという特性を活かしたもので、用を足す人の大半がハエを狙うようになり、トイレの床の汚れる頻度が大きく減少することに繋がります。
これが大きな成功例として取り上げられ、ナッジが行動経済学の中で研究されるきっかけとなったことは有名な話です。

 

https://imidas.jp/ichisenkin/g02_ichisenkin/?article_id=a-51-191-17-11-g204

ナッジ理論/imidas

 

ナッジの有名人

ナッジ理論を活用した経営者や著名人は数多く存在しますが、この理論を世に知らしめた二人の教授の存在は欠かせません。
シカゴ大学のリチャード・セイラーとハーバード大学のキャス・サンスティーンの二人は、共同で研究して2008年にナッジ理論を提案しました。
リチャード・セイラー教授は1945年にアメリカで生まれ、行動経済学・行動科学の権威として数々の研究実績を残していますが、行動経済学の第一人者であるダニエル・カーネマンと共にこの研究をけん引してきました。
1995年からシカゴ大学の教授として教壇に立ちながら経済学関連の著書を数多く執筆し、多くのビジネスマンに影響を与えています。

 

多くのビジネスマンが勉強している分野の一つだ

  

従来の経済学は市場にマッチしない不完全なものだという問題意識を強く持ち続け、人間の持つ合理的ではない部分にもアプローチした行動経済学の研究を続け、提案をしてきました。
キャス・サンスティーン教授は、リチャード・セイラー教授よりも9つ若く、1954年に同じくアメリカで生まれました。
法学者で憲法学、環境法、行政法を専門としていますが、ナッジ理論を支持する立場として、共同で研究を行い、実践行動経済学を出版しました。
ハーバード大学を卒業して学士号を取得した後、同大学の法科大学院で優秀な成績を収め、法務博士号を取得します。

その後司法省で法務顧問として勤めた後にシカゴ大学の助教授、正教授と昇進し、コロンビア大学、ハーバード大学のロースクールで教鞭をとり、ハーバード大学の教授として数々の研究で成果を上げています。
共著、実践行動経済学の中で「人は誰しも日常的なバイアスに大きく影響されて、選択を誤ることがある」と述べています。
ナッジ理論を活用することで、人が日常の生活の中で、より良い選択ができるように公的機関が支援できるよう提案しています。
この二人による研究の成果がなければ、その後ナッジ理論が広く議論されることもなかったと言えるでしょう。

 

多くの人たち、ビジネスに影響を与えた