尊敬するスティーブ・ジョブズ直々の提案を断ることで新たなサービスを生み出したDropbox

初期のDropboxについて

プライベートでもビジネスでも、パソコンは欠かせないものになっていますが、データの保存方法は一般で使用されるようになってから大きく進化を遂げています。
パソコン本体以外にデータを保存する際に、SDメモリーカード・USBフラッシュメモリーを使う人は今も多いと思います。
この二つは複数のパソコンを使用する方やビジネスでの使用にとても便利ですが、破損して中のデータが読み取れなくなる可能性というデメリットを持っています。


このメモリーの故障によるデータの読み取り不良を自ら経験し、その解決策として創業者が生み出したサービスがDropboxでした。

初期のDropboxは、ファイルデータを保管するためのストレージサービスとしての機能が主な目的だったと言われています。
ネットワークサーバー的な役割で、パソコンのHDDの破損やメモリーカードの破損によるデータの消失・読み取り不良の解決策として、大きく需要を伸ばしていったと推察されます。
自らUSBメモリーの破損によるデータ読み取りの不具合を経験したことから、この失敗が発生しない方法を検討したことが、ビジネスとしての大きな可能性を見出した大きな成功例でしょう。
現在のDropboxは、ユーザー数が5億人を超える世界有数のワークスペースへと進化しています。

当初のユーザーと最初のコアバリュー

Dropboxの誕生は2008年と、僅か10年余りの新興サービスでありながら、ビジネスとしてトップクラスの成功を収めています。
ユーザー数の推移から、当初のユーザーと現在の違いがよく理解できるでしょう。
ファイル・データの保管目的のストレージサービスが主であった創業当初のDropboxは、公開準備の段階で10万人のユーザーを獲得していました。
公開当初には誰でも2GBまで無料でダウンロードが可能なサービスがあり、さらにユーザー数を増やしていったと推察されます。

当初のユーザーは会社のデータ保存を目的とした人や企業でしたが、サービスが充実するに従い個人のユーザーが増加していったと言われています。
Dropboxの最初のコアバリューはUSBに頼らないストレージサービスで、「USBなんかいらない」というスローガンを掲げ、利便性の高いサービスを次々と生み出していきました。
iPhone向けのアプリを2009年にリリースしたことから、スマホ用のデータ保存用に利用する人が増え、ユーザー数は飛躍的に拡大をしていったのでしょう。

マイナスな経験を経たことから、世界を代表する企業を創りあげた。

ピボットする境界線、転換点

5億人を超えるユーザーを獲得する世界有数のワークスペースにまでなったDropboxにも、ピボットする境界線・転換点はいくつかあったと考えられます。
特に大きなピボットとなったのが、Apple社からの買収の提案を受けた時にあるでしょう。
2009年12月に、当時のApple社のCEOであったスティーブ・ジョブズ自らが、Dropboxの創業者のヒューストン&フェルドーンを直接訪ねて買収の交渉を持ちかけてきました。
この頃Apple社は、iCloud事業の立ち上げを計画しており、競合するよりも買収を受けた方が良いと説得をされましたが、売却額がどんなに高額であっても買収は受けないという強い意志を持って提案を断った、と推察されます。

彼らにとっても経営者として尊敬するジョブズからの買収提案を断り、自ら生み出したサービスに自信をもっていたことが、大きなピボットになったと考えられます。
もしこの買収提案を受けていたら今のDropboxは存在せず、業界そのものも違ったものになっていたと推察できます。
2013年に、今度は逆にメール管理アプリのMailboxを買収に乗り出し、傘下に収めるピボットもDropboxのユーザー獲得の大きな転換点になったと考えられます。

なぜそのピボットに気づいたのか、何のデータが元なのか

AppleCEOのスティーブ・ジョブズからの買収提案を断ったことは、Dropboxにとってのピボットになったと言われています。
この出来事が大きな転換点となったのには、ユーザーの増加数のデータにあったと推察されます。
公開準備段階にデモ動画を作成して検証を行ったときに、顧客候補として約5000人であったものが、動画公開後1日で75000人にまで急激に増加し、サービス開始時には10万人のユーザーを獲得していました。

この状況から自らが考えているサービスの需要は大きく拡大し、世界で利用されると考え、Apple社が起ち上げるクラウドサービス(iCloud)に十分対抗しうるものとして自信を深めていたのでしょう。
結果としてユーザーからの支持を拡大し、5億人を超えるユーザー数を誇るワークスペースとなり、その判断は間違っていなかったと証明されることになりました。
2009年以降もDropboxでは新たな取り組みを次々と行い、いずれも高い成果を上げています。

その後のグロース

奇しくもApple社のiPhone向けのDropboxアプリがユーザーの拡大に繋がり、買収を持ちかけられるきっかけとなりましたが、その後の新しいサービスの成果は買収されなかったことによって生まれています。
2011年のDropbox Core APIは、上書きの誤操作防止や削除データのリスト化など、操作機能の強化を目的として開発され、使いやすさが増したことから一般ユーザーの増加に繋がったと考えられます。
2012年には、大容量データ利用者向けに有料プランのDropboxProをリニューアルしました。

このリニューアルでは、50GB利用するユーザーは100GBに、100GB利用するユーザーは200GBに自動的に容量が価格の変更なしに増加されたことも、ユーザーから高く評価されました。
そして2013年には、ビジネス専用のDropbox for Businessが発表され、セキュリティを一般向けよりも強化されたビジネスアカウントになりました。
ビジネス向けのユーザー数はこの時点で400万にも上り、現在は約1000万アカウントにまで成長しています。