ビジネスマンや投資家も勉強している「コンコルド効果」とは。
プロスペクト理論について
経済学の研究で、近年は行動経済学が主流になる傾向があります。
経済学に心理学の概念を組み合わせ、人間の経済的な行動を推測してマーケティングに活かす考え方が広まっているように思われます。
行動経済学の効果や理論には様々なものがありますが、「プロスペクト理論」、「サンクコストとコンコルド効果」、「現状維持バイアス・バンドワゴン効果」について説明します。
プロスペクト理論は、利益を得られる場面では確実性を最も重視し、損失が発生する場面ではリスクを冒してでも損失をできるだけ回避することを重視する、ということを表した理論とされています。
つまり得する事以上に損することをしたくない、という思いが人には強いということですが、ギャンブルを例として説明します。
公営ギャンブルで1レースから最終の10レースまであったとして、序盤のレースでは見返りが少なくても勝率の高いローリスクローリターンの勝負をすることが多くなります。
しかし、終盤になって負け額が予想以上に大きくなってしまった後の最終レースでは、勝率が低くても高配当になるハイリスクハイリターンの勝負をする傾向が強くなります。
マーケティングにおいても、利益以上に損失を重く感じるプロスペクト理論を活かす戦略が重要であることが推察されます。
サンクコストとコンコルド効果
サンクコストとコンコルド効果とは、サンクコスト(埋没費用)にズルズルと引きずられ将来的な判断でミスを重ね、最終的に損失を拡大させる失敗のことを言います。
サンクコストは、投資したものの回収不能になった投資金を意味します。
沈んでしまった(サンク)費用(コスト)、つまりは戻ることのない費用と考えられます。
回収不能になっているわけですから、新しく事業を行ったり改善する際には関係のないものです。
そのマイナスイメージがずっと心に残り、以降の事業判断に悪影響を及ぼす傾向が想像されます。
この状況は、行動経済学的にはコンコルド効果、経済学的にはサンクコスト効果とそれぞれ呼ぶことからサンクコストとコンコルド効果と一緒にして呼ぶことが多くなったように思われます。
どちらも意味としては同じです。
この効果がいつまでも影響している企業や経営者が多いのは、回収できない(負債)のが分かっていても損失を嫌がる人間の経済的行動に由来しています。
結局は少しでも負債を減らしたい、といつまでも引きずることで冷静な判断ができず、更に負債を大きくしてしまうコンコルド効果の呪縛を解き放つことが事業の回復には欠かせません。
コンコルド効果という言葉の由来となった失敗事例である、コンコルド開発事業について紹介します。
1960年代に、英・仏共同のプロジェクトとしてコンコルド開発はスタートしました。
最先端の超音速旅客機として注目され、当初は100機以上のオーダーがあったそうです。
しかし燃費が異常に悪く高価格、定員数が少ないというデメリットがメリットを大きく上回り、キャンセルが続出する事態となりました。
この時点で開発費用が回収見込みの利益を大幅に上回り、赤字になることは容易に想像できましたが、回収不能の開発費用が莫大であったため判断を誤り、開発費用4000億に対して数兆円にも上る赤字を最終的に計上しました。
このことから行動経済学の効果として、長く語られることになったと思われます。
現状維持バイアス
現状維持バイアスとは、新しいことを始めてリスクが生じるよりも、安定した変化のない現状を重視する傾向を表す言葉です。
バイアスには偏見や先入観という意味があり、現状を維持するために間違った偏見や先入観で物事を判断する行動が、現状維持バイアスということになると考えられます。
現状を変えることで大きな利益を得る可能性があったとしても、現状を変化させることによるリスクや不利益の方を恐れ、改革や改善が進まないことが多く見られます。
特に中小企業では大きな投資をするリスクを恐れ、現状に目を瞑り続けて会社が衰退し、最悪倒産の憂き目をみることも珍しくないと考えられます。
行動経済学においては様々なバイアスの定義や効果がありますが、現状維持バイアスは最も不合理なバイアスと呼んでも間違いではないでしょう。
会社員や政治家の世界でも、強大な権力やポストを手に入れると手放すのを嫌がり、なんとしても守ろうとする傾向がありますが、これこそ現状維持バイアスの最たるものと想像されます。
会社においては、現状維持バイアスに陥ってしまった役員や幹部が多くなると新しいことに挑戦するリスクを恐れ、時代の流れに取り残されることになります。
現在の日本の社会は資本主義社会であり、古いことに固執していると成長することは不可能です。
現状維持バイアスの負のスパイラルに陥らない改革的な思考が、今後は更に求められる時代が来ると思われます。
バンドワゴン効果
バンドワゴン効果とは、人間における群集心理と大きく関係する効果の一つであり、多数決で一番支持する人が多いものに周辺の人がつられていく、という同調現象を表す言葉として考えられます。
バンドワゴンと言われても日本人にはあまりピンときませんが、アメリカなどの海外のパレード等で先頭を走る楽団の車や馬車などを、バンドワゴンと呼ぶそうです。
経済界などでよく聞く勝ち馬に乗る、という言葉と同じ意味と推察されます。
政治の世界でも、この言葉は聞く機会が多いと思います。
分かりやすい例として、今は誰もがスマホを持つのが当たり前になっていると思いますが、ガラケーからスマホに変更した理由がそれになると思われます。
友達や同僚がスマホを使うようになって、テレビコマーシャルで紹介する機会が増えたことがきっかけとなり、同調現象が発生したものと考えられます。
皆が持っているから自分も持っていれば安心、といった現象がバンドワゴン効果であると推察されます。