「まずい」、「食べたらダメ」がなぜヒットしたのか、マーケティング目線で説明します。

プラシーボ効果

数多く存在するマーケティングに活かせる行動経済学の効果・現象の中から、「プラシーボ効果」、「ハロー効果」、「カリギュラ効果」について紹介をします。
プラシーボ効果とは、俗に偽薬効果とも呼ばれる効果のことで、何の効果もない一包100円のビタミン剤でも、疲労回復効果がある薬として一包1000円と伝えると、身体が元気になる現象を指しています。
つまり同じものであっても、見せ方や伝え方で相手の思い込みが変化し、思わぬ効果をもたらすことがプラシーボ効果と推察されます。

マーケティングにおいても、プラシーボ効果は上手に活用すると劇的な効果を生み出す可能性があります。

プラシーボ効果は、人の思い込みが経済的な行動に深く関わることを表しています。
例えば、その商品やサービスの権威や商品を使っている有名人が宣伝に参加するだけでも、そのマーケティング効果は高くなると推察されます。
実際の効果以上のものを相手が感じるような文章や動画などにプラシーボ効果は有効ですが、必要以上に根拠のない効果の表現はクレームになる可能性もあります。
多数から支持されるところに人が集まりやすい、バンドワゴン効果を一緒に利用することも得策と考えられます。

ハロー効果

ハロー効果とは、行動経済学で研究される現象の一つで、認知バイアスの一種に含まれます。
モノやサービスなどの決まった対象を評価・判断する際に、その対象の際立った特徴に心を揺さぶられて判断ミスや誤った評価をしてしまう現象を指します。
1920年代に心理学者によって使われた言葉ですが、キリスト教の絵画でイエスキリストのバックに描かれる光の輪をハローと呼ぶことから、後光が射し光り輝くところばかりに目が行き、周りが見えなくなる人の行動パターンをハロー効果と呼んだと考えられます。
ハロー効果には、ポジティブハロー効果・ネガティブハロー効果の2つがあります。
ポジティブハロー効果は、その言葉通り人や物の目立つプラス要素だけを見て、全体を必要以上に高く評価してしまうことを言います。
面接などでよくあることですが、姿勢が良くハキハキと返事ができるというプラス要素だけで、良い人材という判断をしてしまい、実際に必要な技術や知識がなくても採用してしまうことなども、ポジティブハロー効果と思われます。

ネガティブハロー効果は、ポジティブハロー効果とは逆に人や物の目立つマイナス要素だけを見て、実際の物や人以上に低く評価してしまうことを言います。
大きなマイナス要素が一つあるだけで、見えていない部分も全てマイナスに考えてしまうバイアスがかかってしまうと想像されます。
ポジティブ・ネガティブ共に、先入観や固定観念で物事を考えることで誤った判断をすることになりますので、ハロー効果に惑わされないフラットな考え方が重要と思われます。
ハロー効果をマーケティングに活かす方法としては、誰もが知っているタレントや著名人を広告やCMに使用することが良いでしょう。
有名人推奨の商品と聞いただけで、ちょっと興味が湧くことは珍しくありませんので一定の効果が期待されます。

ネガティブな表現なのに気になる商品はたくさんある

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは、特に気にしていなかったことが禁止されたことで余計にやってみたくなる、という心理的な効果のことを言います。
誰もが記憶にあると思いますが、学生時代に校則で禁止されていることを影でこっそりやる、という心理と同じと思われます。
この言葉の由来は、1980年代に公開された18禁のポルノ映画「カリギュラ」の名前が発祥です。
この映画はグロテスクな性交シーンやバイオレンスシーンがあまりにも多すぎるため、多くの劇場で公開が中止されていきました。
すると公開中止が続出したことにより、どんなシーンがあるのかという部分のみに多くの人の興味が集中し、長距離移動してまでこの映画を観に行く人が続出しました。
このことから禁止されると、逆にその行為をやりたくなる人の心理をカリギュラ効果と呼ぶようになった、と想像されます。

カリギュラ効果を表す具体例を紹介します。
最近はヘルシー志向が強い傾向にあり、健康食品の代表である青汁も人気が再燃しています。
青汁と言えば、八名信夫さんがCMに出演して「まずい!もう一杯」と大声で言うシーンが、印象深いと思われます。
これも「まずい」というマイナスのキーワードが逆に気になり、飲んでみたくなる人が続出してヒットに至ったと言われています。
ネット通販の商品の宣伝文句によく使われる言葉に、「友達には教えないでください」というものがあります。
ダイエット商品やアダルト商品ではあらゆるもので使われていますが、「教えないでください」という響きに興味を持つ人はやはり大勢いて、現在でも少し表現を変えながら使われる傾向にあります。
「見たらダメ」、「食べたらダメ」というマイナスの表現をマーケティングに活かすとしたら、マニアックな物の宣伝に最適と考えられます。
例えば、激辛のカレーやラーメンが売りのお店なら、「高血圧の人は絶対食べないでください」というキャッチフレーズは効果的ではないでしょうか。
本来マイナスなところを逆手にとってプラス材料にする時に、カリギュラ効果は使えると思われます。