ビジネスを戦略的に進める、ナッシュ均衡や囚人のジレンマの理論とは?

発案者

ビジネスにおける戦略の理論は、これまでにも様々なものが活用されてきていると思われます。
ゲーム理論もその中のひとつで、元々は自然界における相互依存の状況など、複数が複雑に絡み合う問題や行動などを数学的な見地から研究する学問として始まりました。

発案者はジョン・フォン・ノイマン(数学者)とオスカー・モルゲンシュテルン(経済学者)が、1944年に「ゲーム理論と経済行動」を発刊したことから誕生した、と考えられています。
その当時に主流と言われていた古典は、経済学に批判的な考えとして生まれたものでしたが、1980年代にゲーム理論によって経済学の考え方に革命を起こし、中心的な考え方として利用されるようになったと言われています。

自身の行動と自身の利益が他者の行動に依存する状況を戦略的状況と呼びますが、これを経済学として研究することが、ゲーム理論として応用されています。
心理学・生物学・経営学・政治学・工学・法学等、あらゆる学問にもゲーム理論を見ることができると思われます。
現代社会に欠かせない理論として、必要不可欠な存在と考えられます。

特徴、評判

ゲーム理論の特徴を表す考え方のひとつに、ナッシュ均衡という定義があります。
ゲーム理論の中でも非協力ゲームを解く定義で、相手の戦略が読めていて相手がそのまま変える気配がないときに、自分のみが戦略を変えると損害があることが解かり、その状況がゲームに参加しているプレイヤー全てに起こる状況を呼んでいます。
損をすることがあらかじめ分かっているので戦略を変えない、というのが結論として導き出されますが、すべてのプレイヤーにも同じ状況が考えられるため、進展が見られない硬直状態となっていることが推察されます。
このような戦略方法が、ナッシュ均衡と呼ばれています。

ナッシュ均衡は非協力ゲームで成り立つ理論になり、参加者が協力して一斉に戦略を変えることが起こりえないという状況を前提としています。
例えば、大型のスーパー間で特定の商品の値下げセールが始まり、お互い利益が出るギリギリまで値下げを行ってしまった場合に、上げることも下げることもすべての店舗ができない状況になることも、ナッシュ均衡の状態にあると考えられます。
考え方としては評価されますが、この状況を打破するためには協力的な状況を作り出す必要があり、評判や評価は大きく分かれる考え方です。

メリット、デメリット

囚人のジレンマは2人組の強盗犯が逮捕され、別々に取り調べを受けている状況で黙秘を続ければお互いに刑は1年となりますが、自白をすることで刑が軽くなると誘導されると、自分が得すると考えて自白をします。
しかし結果的に双方が自白をすることで刑は厳しくなり、懲役の年数が長くなるというのが囚人のジレンマです。
ナッシュ均衡と囚人のジレンマ等、ゲーム理論の考え方は社会科学の分析として活用されることが多く、また企業等の現実的な維持決定の指標としての役割も担っている理論として、数々のメリットがあると考えられています。

ゲーム理論は複雑な状況に応用できると思われていますが、実は直接的に応用ができる現実性に乏しいというデメリットを上げる方も少なくありません。
哲学を例にすると解かりやすいですが、哲学の考え方は学問としては理解できても、現実的なシーンにそのまま当てはめることはなかなか難しいものです。
これと同じようにゲーム理論を提唱する方は、複雑で困難な状況に対して抽象的に定義を作り出し、あたかもどんな状況にも対応できる手段のように見えますが、実は小説のようなものとも考えられます。
数字で表すか文章で表すかの違いはありますが、寓話的な一面があることも理解する必要があります。

ゲームのように簡単にはいかないゲーム理論

書籍について

ゲーム理論について知識のない初心者の方でも、ゲーム理論の活かし方がよく解かる書籍をいくつか紹介したいと思います。

「マンガでわかるゲーム理論」
名前の通り、マンガでゲーム理論について解説してあり、半分が文章、半分がマンガになっています。
文章だけで解説しているものよりも解かりやすいので、初心者に最もおすすめの書籍です。

「世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている」
こちらの書籍の中では、囚人のジレンマやナッシュ均衡などの事例を数多く載せてあるので、ビジネスでの活かし方を理解するのにとても役立ちます。

「直感でわかるゲーム理論」
こちらはテスト問題の後に解説が載せてあるので、読んでいくことでゲーム理論が身に付く実用的な書籍になっています。
直感でわかる、というタイトルとは少し意味合いが違いますが、読めば読むほどゲーム理論の考え方が理解しやすいと思われます。

派生した戦略

ゲーム理論は元々は囚人のジレンマやナッシュ均衡等、心理学的な観点から考えられた理論ですが、様々な学問に置き換えて取り入れられてきました。
経済学の観点で考えられた戦略は、現在のビジネスに活かされています。
実際に活かされた戦略を紹介します。
例えば、ラーメン店が3軒同時にオープンする予定の場所に、自身がラーメン店をオープンするとします。
どのお店も立地・サービス・品質がほぼ同じだとして、500~1000円の範囲で決めるとして、価格はどのくらいが適正でしょうか。

ナッシュ均衡とパレート最適を取り入れた戦略が、この場合は必要です。
パレート最適では、全体の利益が最も大きい状態にする方法なので、すべての店が1000円になります。
一方のナッシュ均衡では、すべての店が価格競争を始めるため最終的に全店が500円の価格にせざるを得ない状況になると予想できます。
結果として、パレート最適をこの場合は選択することが良い、と考えられます。