鋼鉄の340倍という異次元のタフネスを有する「クモの糸」ものづくりの新時代を担う「Spiber株式会社」

ベンチャー企業のSPIBERとは

SPIBERは、山形県鶴岡市覚岸寺字水上に本社を置いている企業です。 SPIBERは、蜘蛛を意味する「スパイダー(Spider)」と繊維を意味する「ファイバー(Fiber)」を掛け合わせた造語です。 2007年に慶応大学の冨田勝研究室の研究員であった関山和秀氏が、独立して開業したバイオベンチャー企業です。

SPIBERでは、タンパク質を素材として実用化する事業を展開しています。
SPIBERが開発した人工の蜘蛛の糸は世界で最も強い繊維と呼ばれていますが、過去にはアメリカのNASAが同様に人工蜘蛛の糸の開発に取り組み断念したほど難易度の高いもので、いかにSPIBERの技術が高いのか推察できます。

新時代の素材で地球を守る

この人工蜘蛛の糸は、強くて伸びるという相反する性能を持っています。 蜘蛛の糸だけでなく、タンパク質は全ての生物の基幹素材で、20種類に及ぶアミノ酸が配列を変え構成されることで蜘蛛の糸、爪、髪の毛、絹糸が作られています。 人工の蜘蛛の糸はその蜘蛛の糸の遺伝子を微生物に組み合わせ、蜘蛛の糸と同様な成分を製造していく方法で、研究開始から約3年の歳月をかけ成功しました。

SPIBER経営者の関山和秀氏

この夢のような素材である人工蜘蛛の糸を開発したSPIBERの経営者関山和秀氏は、1983年生まれの32歳です。 東京都大田区に生まれ、慶応義塾高校から慶応義塾大学環境情報学部に入学、在学中に入った冨田教授の研究室でバイオテクノロジーの研究に傾倒し、蜘蛛糸タンパク質の合成・線維化を始めました。 そして2007年に線維化に世界で初めて成功し、起業をしました。 関山社長は幼少期には特に優秀だったわけではありませんでしたが、慶応義塾高校在学中頃から友人らと事業を起こすことを考え始めました。 祖父も父親も経営者であったことも、少なからず影響していると思われます。

また、2000年前後の時期はITのベンチャー企業が多く設立した頃で、若い起業者に大いに刺激を受けていたと考えられます。 2007年にスパイバー株式会社を設立しますが、人工の蜘蛛の糸製作を発表した際には、周囲からは冷たい反応だったそうです。

様々な文献から蜘蛛に関する情報を入手し研究に研究を重ねた末、2013年5月に蜘蛛の糸を人工的に合成・量産する技術をついに確立しました。 この人工蜘蛛の糸はナイロンを大きく上回る伸縮性と鋼鉄の4倍の強度を併せ持ち、外科手術の縫合糸や人口血管などの医療用として、また飛行機や自動車への使用も検討され、世界での利用が考えられる希望の商品となっています。