社内告発をピボットに、社内環境の改善に取り組んだUber

初期のUberについて

スマホに入れておくと様々なサービスや機能を使うことができるアプリは、今では日常的に使う欠かせないものになっています。
ゲーム用や連絡手段としてのアプリが主流ですが、交通に関するアプリもたくさん存在しています。
最近はカーシェアリングが注目されていますが、タクシーを相乗りするシェアリングサービスが海外の様々な国で人気が上昇し、日本でもサービスを開始したのが「Uber」というアプリです。

Uberの設立は2009年で約10年の歴史があり、日本では約5年前からサービスが始まっています。
初期のUberが集客のために行った手法は、サービス業でのお手本になると推察されます。
注目度を上げるために使用する車を黒塗りのリムジン(UberBlack)だけにして、高級感や特別感を演出しました。
プロのドライバーのみを選んだことも、特別なイメージを強く見せることとなりました。
この手法が口コミで評価となり、SNSでユーザーから拡散して認知度が急上昇、その後は低価格のサービスを提供し人気を不動のものにしたと考えられます。

当初のユーザーと最初のコアバリュー

日本では、まだ地方にまでそのサービスが行き渡っていませんが、今後は全国的なサービス網の充実が期待されるUberは、現在800万人以上のユーザーが利用していると言われています。
アメリカはサンフランシスコで誕生したUberは、創業当初はセレブや経営者等の高収入者層をターゲットとしたサービスを行ってきました。
高級車を配した質の高いサービスでユーザーから高い満足度が得られたという高評価を呼び、実績と知名度を向上させて成功へと導きました。

Uberの最初のコアバリューは「常にガムシャラに働く」、「顧客に集中する」、「大きな賭けに出る」等で、完全実力主義であったと想像できます。
シリコンバレーの成功した企業の多くが実力主義で成功を収めていますが、Uberも同様のコアバリューでビジネスを拡大させていったのです。
この実力主義により、僅か10年で世界70ヶ国以上、700億ドルの市場価値を生み出す企業へ導いたのだと推察されます。
しかしその考え方により、社内では新たな問題を生み出す結果にもなりました。

ピボットする境界線、転換点

大きな成功を収めた企業でも、その業績が停滞したり運営上の問題などによって、路線の変更や方向転換を余儀なくされる時があります。
このような転換のタイミングをピボットと言いますが、Uberのピボットする転換点となったのが、2017年の元システムエンジニアの女性から自らのブログでの告発からだ、と言われています。
このファウラーという元エンジニアの女性は、上司からセクハラ・女性蔑視の差別を受けていた、と告発されました。

在職中に上司のこのような行為について人事部に訴えたものの見過ごされ、更に助長させる原因となったと指摘をしています。
Uberは完全実力主義を社員に求めるあまり社員同士がお互いを陥れることばかりを考え、管理職は部下が出世しないように画策するなど、社内の空気はかなり劣悪であったとファウラー氏は述べています。
この告発の反響はUberの事業そのものにも大きな影響を与えた、と推察されます。
社会問題化するこの事態を収拾するために、CEOのカラニックは対応に迫られたと考えられます。

Ubers世界中800万人を超えるユーザーがいるUbers

なぜそのピボットに気づいたのか、何のデータが元なのか

ファウラー氏のブログによる告発により、CEOのカラニックは自社の内部調査を即座に開始したところ、多くのセクハラや差別の実態が明らかになったと言います。
更に調査を進めていくと、実績を上げた社員の問題行動を上司や幹部が見逃し、対応をしないことでパワハラ・セクハラなどが蔓延する状況を生み出していたことも明らかとなってきました。
特に女性への差別、セクハラについては内部事情の調査データが元となり、明確になりました。

社内エンジニア・研究職・製品管理職で女性の占める割合は約15%で、この比率が過去数年で全く変化していないことが解かり、このデータは公表されました。
この状況を打破するために、CEOのカラニックは翌日には全社員参加の会議を行いましたが、この会議の中で多くの幹部・社員間の問題行動が告発され、会議は紛糾したことでしょう。
そのためこの状況の改善を求める声が殺到した、と推察されるのです。

その後のグロース

元社員の女性からの告発により大きく揺れたUberは、その社内の体質の改善に迅速に乗り出します。
UberはCEOカラニックの考えで実力主義による、ある意味好戦的な手法を使い、シェアを伸ばしてきました。
各国・各地で法律を無視したような強引なビジネス手法や、ライバル企業を貶めるためのキャンペーンを展開するなどのエゴイスティックな事業姿勢を常に見せていた、と考えられます。

この手法が社風となり、社員全体に広がってハラスメント体質を生み出していたことが容易に想像できます。
早急に改善に乗り出したカラニック氏に対して評価する社員もいますが、社内には特別扱いされる幹部のグループが存在しており、問題は山積みになっていることでしょう。
今回の元エンジニアの女性による告発が元で、退職を考える社員も相当数に上っていると考えられますが、今後の改善の状況次第ではさらに増加することも想像でき、予断を許さない状況にあることでしょう。