時流に乗ったからだけではない、稲盛和夫氏が成功した大きな理由を探る。

経歴、実績

今の日本の経済界や製造業が活況を帯びているのは、戦後の高度成長期にメイドインジャパンを世界に知らしめた企業家たちの、弛まぬ努力の結果があってのことです。
そんな昭和の偉人の中でも、経歴はもちろん人徳の高さで後の経営者から尊敬の的となっているのが、現在では京セラの名誉会長でもある稲盛和夫氏です。
稲森氏は、1955年に故郷鹿児島の鹿児島大学工学部卒業後、就職で京都での生活を始めました。
そして1959年に27歳の若さで京都セラミック(現京セラ)を設立し、ソーラーシステム・携帯電話・OA機器の製造販売で収益を拡大し、国内有数の情報通信機器の企業へと成長させてきました。
京セラの社長、会長として実績を残しながらKDDIの設立にも関わり、通信業界の発展に貢献したということが容易に推察できます。

また経営が破綻した日本航空(JAL)の経営再建では、政府の要請を受けてCEOとして活躍し、数年で日本航空を優良企業へと大きく変化させることに尽力したと考えられます。
事業としての実績もさることながら、人材育成においての活躍や実績は素晴らしいものがあると思われます。
1984年に私財を投げ打って稲盛財団を設立し、その資金で京都賞を創設し、社会の発展や進展に貢献された方を表彰しています。
そんな稲盛和夫氏が最も力を注いでいるのが、若い経営者を育てるために設立した経営塾の「盛和塾」の運営です。
国内外に全100の塾を持ち、多くの優秀な経営者を生み出すことに貢献していると思われます。
稲盛和夫氏はその活動の中において、数多くの人材育成・企業再建・新規事業立ち上げを行ってきました。

有名なことがら

今でこそ携帯事業や通信事業には多くの企業が参入していますが、1984年より以前、通信事業に関してはNTTの独占事業であったことが記憶にある方もいるかと思われます。
1984年の通信事業自由化で新たに誕生したのがDDI(第二電電)ですが、その会社設立の中心となったのが稲盛和夫氏でした。
そのときには周辺の経営者からは「成功するとは思えない」、「無謀だ」と散々言われたそうですが、周辺の意見には惑わされずに挑戦し、結果を残しました。
「何故挑戦したのか?」という質問に対し、稲盛氏は「人間として正しいことは何かを深く考えた結果だ」と答えています。
この考えが後に稲盛哲学と呼ばれるものへと、繋がっているのではないかと考えられます。
稲森氏が立ち上げたDDIは、KDDとの合併を経てKDDIとなり、NTTに次ぐ国内No.2の通信企業となり、その売上は約3兆円にも上ると言われています。

このKDDIが成功したのは時流に乗ったからとか、稲盛氏の技術が優れていたからではなく、氏自身の「哲学が正しかったから」と、本人は対談などで語っています。
その哲学が正しかったことを日本中の人に証明したのが、日本航空(JAL)の再建だったと推察されます。
2010年に2兆3000億円という戦後最大の負債を抱え、事実上経営が破綻したJALの再建を稲森氏が受けたときも、周辺は「再建は不可能」、「経歴に傷がつく」などと言われたそうです。
しかしこのJALの再建事業は、僅か3年弱で再上場を果たす大成功になったことは、記憶に新しいところだと思われます。
この事業を成功へと導いた一番の要因は、まずは社員の意識を変革させ、世界一意識の高い会社へと生まれ変わらせたことである、と推察されます。
役所のような組織になっていたJALの経営状況を変えるために、稲盛氏はリーダー教育に熱心に取り組んだと考えられます。
その努力の結果が最終的にJALの収益を立て直し、黒字企業へと変貌させることになりました。

通信事業における功績はとてつもなく大きい

有名な言葉、座右の銘

稲盛和夫氏は、その業績の数々はもちろん多くの有名な言葉を残しています。
稲盛氏が数々の著書の中で使われている有名な言葉に、「利他の心」というものがあります。
利他の心とは、自らを犠牲にしてでも他の人のために動くこと考えること、だと言います。
逆の意味が「利己の心」で、自分のために動く自分が良ければそれでいい、と考えることを言います。
人間は基本的に利己的になりがちで、利他の心を持って行動することは簡単ではないかと思われます。
しかし利己の心というのは、自分のことを中心に考えているため、周りから賛同されることはありません。
当然視野も狭く、周りを見ることもないことから、大概は間違った判断となりやすいと考えられます。

逆に利他の心で物事を判断すれば、周辺の人からの賛同が得られやすくなり、たくさんの人に協力してもらえることも多くなる、と思われます。
思いやりと周辺の人のことを考えて行動する「利他の心」を持つことこそが、リーダーや経営者として成功する大きなポイントになることが推察されます。
稲盛和夫氏は、「もうこれでいいと思った瞬間から、会社の没落が始まる」、「思うということは人間のすべての行動の源となっている」、「あらゆる事象は心の反映である」など、多くの名言を残されています。
そして「リーダーが私利私欲に走らず、利他の心で判断すること」という言葉が、最も稲盛氏の哲学を表した言葉である、と考えられます。