柳井正のあまり知られていない、約28億円の損失も出した事業とは。

経歴、実績

ファーストリテイリングという会社名を聞いても、あまりピンと来ない方もいるかもしれませんが、ユニクロと聞けば知らない人はまずいないと思われます。
ユニクロは低価格でカジュアルな衣料品を取り扱う、全国展開の衣料品店として大成功を収めたことは、記憶に新しいと考えられます。
そのユニクロを日本最大の衣料品メーカーへと導いたのが、現ファーストリテイリング社長の柳井正氏です。
柳井氏は、1949年山口県宇部市に生まれました。
父親はその頃から紳士服の小売業を営み、地元で知られる名士だったと思われます。
地元の県立宇部高校から早稲田大学経済学部に進学しましたが、当時は現在の敏腕経営者が想像できないほど何の目的も持たず、パチンコや麻雀に明け暮れる毎日だった、と本人が回想されています。
卒業時に大手の商社を受けたがどこからも採用されず、父の紹介でジャスコ(現在のイオングループ)に入社するも、僅か9ヶ月で辞めてしまったそうです。

当時はまだ経営者としての能力が覚醒していなかったと推察されますが、半年後帰省して父親の経営する小郡商事に入社し、徐々にその才覚を現していったと思われます。
1984年に父親の後任として小郡商事の社長に就任し、それ以前から安価でカジュアルな衣料の専門店を全国に展開することを目指していた柳井氏は、同年の6月にユニクロ1号店を広島市に開店させ、中国地方を中心に店舗拡大を進めていきました。
ユニクロという店舗名の由来は、ユニークな衣料(Clothes)からである、と本人が話しています。
ユニクロが全国で売上を伸ばし始めた1991年に、現在の「ファーストリテイリング」に社名を変更し、その後は一度会長職となり社長を退任しましたが、2005年に社長に再任しました。
日本の大富豪のランキングでは、ソフトバンクグループの孫正義氏と共に常にランキング上位となっていることは、経済に詳しい人からは有名な話であると思われます。
新しい事業にも積極的に取り組み、中には成果が上がらず赤字の事業もありましたが、その経営手腕は70歳になった今も衰えを見せていません。
今後の活躍がまだ期待されている、昭和・平成の偉人の一人と推察されます。

有名なことがら

柳井正氏は、ユニクロやGUで低価格のカジュアルな衣料ブランドを定着させたことが最も知られていますが、衣料関係以外にも様々な事業に取り組み、多角化経営をこれまでに模索してきました。
その中では、事業が失敗に終わったケースもいくつかあります。
その例の一つとして有名な話が、事業を立ち上げたときに多くの方に驚きを持って迎えられた、青果事業への参入だったと思われます。
2002年9月に同事業の子会社を設立し、ブランド名は「SKIP」で会員制の宅配・ネット通販サイト・トラック販売・テント販売の4つを展開させ、様々なメディアで紹介されるなど注目度は高めでした。
しかし価格が高めであったことと、会員制であったことなどが消費者のニーズに合わず、事業開始から僅か2年後の2004年に子会社を解散し、事業から撤退しました。
最終的に青果事業での損失は、約28億円という残念なものとなりました。

この青果事業での失敗を教訓として、自らの得意分野である衣料関係での経営拡大の路線を推し進め、2006年には新しい衣料ブランドのGUを立ち上げました。
ユニクロよりもさらに低価格で、よりカジュアルな点を重視したブランドとして全国展開を進めている、と考えられます。
さらに自社ブランドの店舗の全国展開とは別に、2005年から商業施設ミーナを運営しています。
現在は4つの施設が運営中ですが、今後も商業施設の拡大を柳井氏は検討していると思われます。
柳井氏は自社の事業戦略に関しての動きはもちろんですが、社外取締役として国内の大手企業の経営をサポートしています。
情報通信の大手ソフトバンクグループの取締役としては、2001年から活躍をしています。

柳井が手掛けるビジネスは様々な街に進出している

有名な言葉、座右の銘

70歳を迎えた現在も精力的に活動を続ける柳井正氏は、これまで数々の名言を残されています。
その柳井氏の言葉の中で最も印象的で有名なのが、自著にも使用している「一勝九敗」です。
「私は事業で失敗ばかりしている、これまでの事業では一勝九敗、その唯一の勝利がユニクロだった」ということです。
致命的な失敗でなければ失敗は何度してもいい、とにかくやってみることが大事である、と柳井氏は話しています。

また経営者としての考えとして、名言も残されています。
「危機感がなければ、企業経営をやっていても意味がありません。
危機感を失くすと、企業は変化も失くします。
変化をし続けることを辞めたときは、倒産の前兆です。」
常に挑戦を続ける柳井氏ならでは、の言葉であると推察されます。
商売の基本は「スピードと実行」とも伝えています。
この言葉には、変革・改善が必要なときは恐れず最短で悩まずに実行する覚悟が必要である、という意味が込められていることが考えられます。
失敗を恐れずに一生九敗の精神を貫き成功を収めた柳井正氏の言葉は、心に響く素晴らしいものであると思われます。