ニュースで結構でてくるけど、理解できていない言葉「利益相反」とは

1.利益相反とは


テレビやインターネット上のニュースで会社が経営難に陥ったり、倒産したりした場合、その時の経営陣が会社の損害を与えたとして、株主や会社から告訴されることを耳にします。


このようなニュースで聞くことのある言葉に、利益相反というものがあります。
言葉としては聞いたことがあっても、その意味はよく知らないという方も多いと思われます。
利益相反とは、その行為が一方に対して利益になると、同時に他方にとっては不利益となる行為のことを言います。

そのため一定の範囲を逸脱すると、会社法や民法で不法とされることがあります。
例えて言えば業務の依頼があった時に、依頼者以外の第三者や自分自身の利益を優先し、依頼者に損害を生じさせるようなことを指しています。


中立の立場で公平に行わなければならないことを、一方に有利になるように仕事をすると、これに該当します。

企業内での行為を一般的に利益相反取引と呼んでいますが、会社の経営の中心である取締役は権限が強く、方向性を誤ると利益相反取引を行う危険性が考えられます。

世界では規模の違う事案で発生している

2.取締役による利益相反


取締役は、会社の方向性や事業計画などの意志決定をする重要なポジションで、多くの権限を有しています。
それと同時に大きな義務も負っていますが、その一つに忠実義務と呼ぶものがあります。

忠実義務とは、取締役は法令・株主総会の決議を遵守し、忠実に会社のための職務を遂行する義務があると、会社法で規定されていることを指します。

この中に第三者、または自信の利益を会社の利益よりも優先し、会社に損害を与えるような行為をしてはならないとあり、取締役が会社に対して利益が相反する行為を制限しています。

例えば取締役が会社に、または会社が取締役に、それぞれの有する商品を売買することや、金銭の貸し付けなども利益相反取引の対象となると思われます。
ただし、これらの行為が株主総会で承認されれば、取引が認められることになります。

また取締役会で承認されることで、認められる場合も考えられます。
代表取締役(社長)が同じ会社同士での取引においては、双方共に利益相反取引の対象と思われます。

3.利益相反による事件例


利益相反が大きく取り上げられた事件を例にして、利益相反取引について知っておくことが求められます。
近年では、医薬承認で利益相反問題が取り上げられた「ディオバン事件」が特に有名で、多くの新聞に記事が掲載されていました。

ディオバン事件は高血圧治療薬のディオバンの臨床研究に対して、ノバルティスファーマ社の社員が研究の統計解析に深く関与し、利益相反が問題視されました。


このディオバンの臨床研究は複数の大学で論文として発表されていましたが、その多くにノバルティスファーマ社の社員が関与していることが発覚し、後に発表された論文全てが撤回される異常事態となったことが大きく報道されました。

データが不正に操作されたことにより、ディオバンは実際の医薬品として実際以上の効果があると誇大に広告され、不正が発覚するまでに日本国内で年間に1000億円を超える売り上げを計上しており、この間の損害額は年間で200億円にまで登ると考えられています。


この事件では、捜査の中でノバルティスファーマ社の社員が臨床研究に自身の身分を隠して関与していたことが分かっており、不正行為を会社として認識していたと疑いが持たれていました。

ァーマ社は無罪となりましたが、医薬品の業界における癒着・利益相反関係が大きくクローズアップされる事件となりました。

4.利益相反の問題点


医薬品の研究をする大学と薬品会社との間での利益相反事件もそうですが、利益相反の問題点を理解する上で様々なパターンが考えられます。
いくつかの事例で利益相反にあたる問題が見えてくる、と思われます。


一つ目は、会社の代表取締役が別の会社で取締役を兼任している場合です。
代表取締役になっている会社で取締役をしている会社と取引をすることになった場合ですが、代表取締役は取締役会の承認を得ずに自己の判断で取引をすることは可能で、利益相反取引として認められることになります。

一方の取締役をしている会社では、取締役会の承認または株主総会での承認を得なければ、取引を行うことはできません。


同じ人物であっても、その立場で利益相反が問題視される場合とそうではない場合が十分に考えられることになるかと思われます。
この他にも、経営者が同じ人物の別会社との取引において利益相反関係が起こり、結果的に大きな事件として取り上げられたこともあります。


法人としての会社と、経営側の取締役の間でも利益相反があるということが、大きな問題点と推察されます。

5.利益相反の予防策


利益相反で法律に触れないように対策するには、会社法・民法などを熟知することが最適と考えられます。


しかし会社経営に関しては、専門家であっても多くの取締役や役員の方々は法律の専門家ではないため、全てを理解することは困難です。
この分野に関する専門家のアドバイスを受けて適正に対応することが重要ですが、親族経営の企業の場合は特に利益相反関係について理解しておく必要があります。


親族経営の場合は、取締役が親・兄弟・配偶者・子供などが多くなり、身内に対する贈与が利益相反行為の対象となることも出てきます。

個人としても、親権者が自身の子供を債務の連帯保証人にしたり、子供の所有動産・不動産の抵当権設定などは利益相反行為です。


親族経営の会社では、債務が大きくなった際にこのような行為が行われ、後々に大きなトラブルとなることも事例として多く存在しています。
金銭に関わる意思決定を行う際には、利益相反に該当しないかを事前に判断することが予防に繋がると思われます。