VC関連用語「デューディリジェンス」を考えてみた

1.デューディリジェンスとは


好景気の続いた1980年代は、株式投資や不動産の売買で利益を得た人が増えたことで、バブル景気と呼ばれていました。
その後バブルがはじけて、多くの負債を抱えて倒産する企業が一気に増えることになり、大企業や金融関係にも大きなダメージを与えました。


その影響によって企業の合併・買収が至るところで起こり、M&Aという言葉が一部の専門家の用語ではなく一般的に広く知られるようになりました。

現在は投資目的で企業の株を売買したり、企業買収目的と株取引を行う専門のファイナンス企業も多くなっています。

その投資業界でよく耳にする言葉に、「デューディリジェンス」があります。
元々は、ある行為を行った人や企業が結果の責任を負うか負わないかを判断する時に、正当な努力や義務を怠らないことを意味しています。

少し分かりにくいですが、投資業界では一般的にM&A投資取引を行う際に対象となる企業や不動産等に対して、資産を調査することを「デューディリジェンス」と呼んでいます。

調査することは非常に大事

2.デューディリジェンスはなぜ必要か


この「デューディリジェンス」が投資・M&Aの際に、なぜ必要かということについて知っておくことは、今後の取引で役立つかと思われます。
M&Aにおいては、企業を買収する価値があるのかということを調べずに買い付けをすることは大金を動かすことに対してリスクが増大しますので、調査するのは必然と考えられます。
しかし、M&Aは本来取引時には合意の元に投資を行っているはずなので、改めて調査の必要はないと思われます。

ただ投資目的での売り買いの場合に、売り手側は特に自身にとって不利な情報を進んで開示することは稀であると思われます。
買い手側が出された情報だけで判断することはリスク回避には繋がらず、独自の調査すなわち「デューディリジェンス」が重要となってきます。
もちろん売り手側も買い手側に不明な点がないかお互いに調査を行い、透明性の高い取引を行うためにも必要なことと考えられます。

3.デューディリジェンスの手順


デューディリジェンスの手順を簡単に紹介すると、以下のようになります。
状況によって少し変化をしますが、ここでは基本的な手順(プロセス)とさせていただきます。

  • ①投資の戦略・事業戦略を協議し策定
  • ②M&Aまたは投資の対象となる企業・不動産等の候補の選定
  • ③情報保護に関する契約を結ぶ
  • ④大まかな検討・調査
  • ⑤取引先との基本合意
  • ⑥デューディリジェンスの開始
  • ⑦投資・M&Aの詳細な条件の交渉⇒合意

この後は正式に売買契約を締結し、M&Aの手続きを開始するという流れになっています。

4.デューディリジェンスの種類


デューディリジェンスには、調査内容によっていくつかの種類が存在しています。
まず財務デューディリジェンスですが、基本的にこちらの財務に関するものが最も重要、と思われる方も少なくはないと思われます。
直近から数年前までの財務状況や業績、負債等、調査対象は多岐に及びますが、この部分の調査を怠るとリスクが高くなる可能性があると想像できます。
事業デューディリジェンスでは、その企業の将来性やビジネスモデルを調査することがメインとなります。


実際に公表された情報に不明な点はないかを調べて、投資に値するかを判断することです。

そしてデューディリジェンス法務については、企業としての将来性や財務的に投資に値すると思われても、コンプライアンス上問題を抱えている企業に投資することは危険が伴うことから必要となる調査です。
法律の専門家(弁護士事務所等)に委託して調査することが望ましい、と考えられます。


この他にも、人事的な部分のデューディリジェンスも重要なポイントと思われます。


労使関係や従業員の働く環境、人事制度などに問題があると、M&A後に大きな問題が発生する可能性があると推察できます。

5.デューディリジェンスの活用


デューディリジェンスはスムーズに進めていくことが、投資・M&Aの成功には欠かせないと考えられます。
上手な活用方法が望まれますが、チェック項目は多岐に渡っていますので、分かりやすくまとめる必要があります。
このような時には、デューディリジェンスのチェックリストを活用することをおすすめします。


法務・事業・財務・人事等の主要な調査対象別にリストを作成し、本当に必要な項目かをしっかりとチェックすることで、無駄なくデューディリジェンスを進めていくことが可能になると思われます。

6.デューディリジェンスの今後


投資・M&Aを進めていくことにおいて、デューディリジェンスは欠かせないツールとなっています。
基本的なデューディリジェンスの流れや活用方法について紹介をしてきましたが、企業の形態や状況はそれぞれ同じように進めることで必ず成功する、とは言えないかと思います。


今後、新たな活用方法や改善策が専門家から発案されることもあるかもしれませんが、まずは行う際に必要な内容についてしっかりと精査し、進めていくことが重要かと考えられます。


優先順位を付けて効率良く進めていくことが今後のリスクを抑えることになりますので、成功へと導くデューディリジェンスは最も求められるのではないでしょうか。