行動経済学の事例を見てみましょう。

行動経済学の事例①

客観的に見ると、人間の行動には合理的でないようなことが、しばしば起こりうるものです。
人間の行動を詳細に観察してみると、決して合理的でない行動をする理由について、研究・検証を行うのが行動経済学の考え方と推察されます。
行動経済学を表す具体例として、人間の行動に関する心理的効果をいくつか紹介します。
まず「フレーミング効果」ですが、これは全く同じものでも表現の方法が違うだけで別のものとして受け取られることを言います。

選択肢が複数存在する場合、人間は相対評価をする傾向があり、客観的に合理的判断(絶対評価)をしない可能性が考えられます。
分かりやすい事例としてマーケティングで説明すると、ある商品を選ぶときに性能はイマイチだが安いAと、高性能だが高いBから選ぶ場合は、ほぼ1/2に分かれます。
ですが、Bよりも更に高性能のCという商品も含めて選ぶことになると、AとCよりもBを選ぶ確率が上がります。
つまり3つを相対した場合には、「高すぎない」、「質も悪くない」とBが判断されることになり、最も選ぶ人が多くなるのだと思われます。

フレーミング効果とは別の行動経済学の効果になる、「おとり効果」というものも存在します。
おとり効果とは、判断に迷う選択肢の物の中に、間違いなく選ぶことのない選択肢を追加させることで、判断力を変化させる効果のことを言います。
おとり効果は様々な商品や展示先でも利用されていて、気がつかないうちに必要のないサービスや商品を購入していることもあるかと思われます。
レストランや喫茶店にあるお昼のランチセットを例におとり効果を使うと、以下のような形になります。
Aランチが500円、Bランチが800円とある場合には、当然ですが選択肢は二つで比率はほぼ1/2になるのは理解できるでしょう。
ここにCランチ1300円が加わると、途端にBが最も選ばれることになると推察できます。
結論として、人間は3つの選択肢がある場合には、最も安全な真ん中を選ぶ傾向があるということが分かります。
実際にあらゆるサービスが、このおとり効果を利用しているものと思われます。

選択肢が2つのときと3つのときで確率が変わる。

行動経済学の事例②

行動経済学を、脳科学の分野から考えた事例について紹介します。
多くの人は忙しかったり疲れたりすると、「もう動きたくない」、「面倒くさい」などと思うようになることが考えられます。
脳も基本的に人間の表層的な考え方と一緒で、面倒くさがりという点ではそれ以上のものになると思われます。
効率良く、負担が掛からないことを最も重視しているのが脳であり、その負担を減らすための行動経済学の理論があります。
その一つが、「ヒューリスティック」という行動です。
ヒューリスティックは、その人がこれまでの経験則を元に行動する傾向がある、ということを表す言葉です。
つまりはこれまでに経験してきた物事や考え方から、新しく見たり聞いたりした物事を判断することが、ヒューリスティックであると考えられます。

ヒューリスティックには、利用しやすさで判断する「利用可能性ヒューリスティック」、自分の数少ない経験から物事を判断する「代表性ヒューリスティック」、最初に見たこと・聞いたこと(第一印象)から物事を判断してしまう「係留と調整ヒューリスティック」の3つがあります。
行動経済学における合理的でない行動をする際に、ヒューリスティックであることが当てはまることが推察されます。
ヒューリスティックは物事を考えるエネルギーを節約し、脳の負担を減少させる極めて合理的な行動であると考えられます。

行動経済学の事例③

行動経済学には、他にもいくつもの理論や効果が研究結果として発表されています。

「アンカリング効果」
アンカリング効果は、インパクトのある数値・情報が開示されることで印象が大きく変化し、行動に影響を与える効果を表します。
例えば、「限定特価10000円」よりも、「定価30000円⇒今なら限定特価10000円」とした方が、より購入願望が高くなると思われます。

「ハーティング効果」
これは行列のできているお店は人気がある、と思わせる効果のことです。
人には大勢集まっているとそこに入りたいという心理があり、「並んでいる場所=みんなから人気がある」と思い込む傾向を狙ったものと考えられます。

「プロスペクト理論」
こちらは株式やFXなどの投資の現場でよく見られる考え方です。
利益が得られる可能性が高いシーンではリスクの回避を人は優先し、損失(マイナス)になる可能性が高いシーンでは損失の回避を優先する傾向にある、という理論です。

「現状維持バイアス・現在志向バイアス」
現状維持バイアスは、変化や新しいものを避けて現状を維持することに力を注ぐ心理作用です。
現在志向バイアスは、将来を見据えた改善での利益よりも目先の利益を最優先して、改善・改革が送れる心理作用と推察されます。

「メンタルアカウンティング」
お金を使うときに人は決して合理的に判断をしない、お金を使う判断をするときに自身の中にフレームを形成し、その範囲内で決定をするという行動経済学の概念を言います。
例えば公営ギャンブル(競馬・競輪等)では、前半のレースよりも最終レースの方が配当率が最も高く、ギャンブル性の高い大穴狙いの率が劇的に上がると言われています。
つまりこれはその日の収支がフレームになり、負け額を一気に挽回したいという心理が働き、最終レースでは大穴狙いをするという心理状態の人が増えることがメンタルアカウンティングと考えられます。