上手く付き合えば、仕事にも日常にも活かせる認知的不協和
認知的不協和とは
人間は心の中で様々なことを考えて行動を起こしますが、
その行動には相反することや、矛盾が生じるようなこともたくさん存在します。
冷静に合理的にすべての物事を判断できれば良いのですが、
心の中で様々な葛藤が起きたり、過去の経験などでバイアスをかけてしまうことも少なくありません。
心理学で人の心の中で相反する認知をしてしまうような行動を、認知的不協和と呼んでいます。
認知的不協和は、自分の中で相反する二つの認知が存在すること、
またその相反する認知があることにより、不快な気持ちになることを表す用語です。
この説明だけ聞くと少し難解なものに感じるかもしれませんが、
認知的不協和は日常の中で普通に起こる心の状態のひとつです。
例えば甘いものが大好きな人が、生クリームたっぷりの美味しそうなケーキが
目の前にあると「食べたい」という欲求は強くなります。
しかし、食べたいという気持ちが起こるのと同時に、
生クリームたっぷりでカロリーがすごく高そうで太るかもしれないと考えます。
この「食べたいけど太るかもしれないから食べないほうがいい」という、
同時に矛盾した認知が発生します。
まさしくこのような状況が、「認知的不協和が心の中で起きている」ということになるのです。
さらにこの「食べたいけど食べたら太るかも」という相反する認知で悩んでいる状況で、
食べてしまうと太るという気持ちが強くなり、罪悪感を感じる可能性が高くなります。
逆に食べるのを我慢しても、食べたいという気持ちに逆らうことになり、
どちらにしても矛盾から起きる不快感が強く残ることになるのです。
認知的不協和が発生している状態は、このように悪い心理状況に陥っているということがわかります。
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認知的不協和の著者、有名人について
人は時に、心の中で矛盾した相反する認知が同時に起こり、
不快な気持ちになったり動揺してしまうことがあります。
このような心理状況を、認知的不協和と心理学では呼んでいます。
認知的不協和は、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって研究・提唱されました。
レオン・フェスティンガーは、1919年にニューヨークのブルックリンで生まれました。
ロシア移民の家庭に育った彼はニューヨーク市立大学を卒業した後、
心理学者として名高いクルト・レヴィンから学び、児童心理学の博士号を取得します。
第二次大戦後、マサチューセッツ工科大で恩師レヴィンと共に心理学の研究を続けます。
そして1957年に認知的不協和の理論という著書を発刊し、
認知的不協和の提唱者として世界に名を知らしめることになります。
フェスティンガー氏は詳細なデータや数値などの数学的な緻密さよりも曖昧な部分を許容し、
理論や法則を検証する方が発見の価値が高いと述べています。
認知的不協和の理論以外にも、要求された水準と意思決定の過程、対人関係と態度形成、
社会的比較過程の理論など、様々な理論を提唱して多くの学者にも影響を与えています。
認知的不協和の理論は、その存在自体が動機付けの一つの要因になるとフェスティンガーは考え、
研究を重ねていきました。
フェスティンガーの認知的不協和理論/株式会社アクティブ アンド カンパニー
有名な事例
認知的不協和を提唱したフェスティンガー氏は、
心理学者のカールスミスとともに検証するための実験を行っています。
実験の内容は、「学生に退屈で面白くない作業を1時間させる」というものでした。
作業後に、この実験が楽しかったことを伝えるプレゼンを行わせて実験は終了となりますが、
プレゼン終了後の報酬として「20ドル貰えるグループ」、
「1ドルしか貰えないグループ」に分けて心理状態を測定しました。
退屈で面白くない作業を楽しいとプレゼンすることで、
認知的不協和を作り出し、心理状況を検証しました。
この実験の結果は、「20ドル貰ったグループ」は作業が退屈という評価を、
「1ドルしか貰えなかったグループ」は、作業が面白かったという逆の評価を下しました。
1ドルしか貰えなったグループは退屈な作業を何故面白かったと答えたのかですが、
これが認知的不協和が起こった後の正当化の影響になります。
20ドル貰ったグループは、面白いとプレゼンしなくても高い報酬を得たことで、
楽しかったと思う必要がなくなり、面白くないという評価を下すことができました。
しかし、1ドルしか貰えなかったグループは退屈な作業が面白かったと結論しないと
理由付けができないため、面白い課題だったとプレゼンしたということです。
日常生活の中でも、認知的不協和は様々なシーンで起こります。
例えば、人気家電商品のAとBがあって、迷った挙句Aを購入した後、
テレビのバラエティ番組でBの商品を絶賛するシーンに遭遇します。
このような場合、自らが購入したAを評価しないバラエティ番組が嫌いになったり、
BよりもAの方が優れている部分にこだわり、自分が購入した商品を正当化しようとします。
このように日常生活の中の色々な場面で認知的不協和が働き、
自らを正当化していることがよくわかります。