希少性に価値を感じ、不要なものまで購入しないよう希少性の法則を知っておこう
希少性の法則とは
物事は合理的に効率を重視して考えれば失敗が起こる確率は極めて低くなりますが、人は常に合理的な行動をするわけではありません。
そのような行動を検証しマーケティングに活用することは、現代社会では必要不可欠な考えとなっています。
行動経済学で研究されている希少性の法則も、マーケティングに活用される現象として知られています。
希少性の法則とは、数が多いものよりもより少ない希少性の高いものの方が価値がある、と考えることを指します。
元々高価なものではなかった玩具やおまけのカードが時を経て現存数が少なくなり、レアなアイテムになって高額になる、といった例は代表的な事柄でしょう。
希少性の法則を証明する実験としてよく知られているのが、クッキーを使った検証実験です。
クッキーの味を美味しいかを調べる簡単な実験ですが、一方は20枚入りのクッキー、もう一方は2枚入りのクッキーで、どちらも同じビンに入っていました。
実験をした結果、20枚入りの方を食べたグループよりも、2枚入りのクッキーを食べたグループの方が美味しいと答えた人が多かったそうです。
もちろん同じ形のビンに、同じメーカーのクッキーを入れて実験を行ったのですが、人が如何に少ない方に希少性を感じるのかが分かるでしょう。
「重要感」、「安定感」、「不安定感」、「成長」、「つながり」の5つのニーズによって刺激され、希少性に価値を強く感じる傾向にあります。
マーケティングでは、この法則を有効的に活用することがポイントになるのです。
希少性の法則の著者、有名人について
希少性の法則は、現代の行動経済学で欠かすことのできない重要な理論の一つです。
これを実験として分かりやすい結果を示したのが、ステファン・ウォーチルという社会心理学者です。
ウォーチル氏は、ビンに入ったクッキーが多いものと少ないものでは、少ないもの方が美味しいと答えた人が多いという実験結果から、希少性に人が影響されることを鑑賞しました。
希少性が人に与える影響を心理学的に詳細に分析して発表したのがチャルディーニになり、現代の希少性の法則・原理は氏によって広められたといっても良いでしょう。
この希少性の法則は、行動経済学の権威 ダニエル・カーネマンが提唱したプロスペクト理論においても検証されています。
プロスペクト理論は未来を予見する理論で、現代の行動経済学の基本的な考え方になっています。
利益が確実に得られる場合と損失が確実な場合では、リスクの捉え方が逆になることがプロスペクト理論では実証されているのです。
レアで手に入れにくいものは金額が高くなるというリスクを負ってでも欲しくなる、という希少性の法則はこれに当てはまるものです。
需要が少ないものが高級なものに見えることをウェブレン効果と呼びますが、これも希少性の法則に合致する内容です。
有名な事例
希少性のあるものに価値を見出す傾向は多くの人の持つ考え方ですが、様々なシーンに応用して有効的に活用されています。
希少性の法則はマーケティングに最も適していると言われていますので、多くの商品やサービスに使用されるのです。
希少性に関して「入手することが難しいものは高額になっても欲しい」、「在庫が少なくなっているので、今買わないと手に入らない」、「レアなものだから人からの注目が高くなるかも」という3つの心理は、マーケティングに活用される代表的な行動パターンです。
定番商品の売れ行きが伸び悩んだときに、数量限定の商品を出すと売り切れが続出することがこれに当てはまります。
販売期間を限定した期間限定商品や、スーパーなどのタイムセールなども効果のある方法です。
逆に希少性により失敗をした事例もあります。
日本でも多くの人が愛飲するコカ・コーラは、過去に味のリニューアルを行いました。
様々なモニターテストの結果、多くの人が美味しいと答えた味に変更し、旧コカ・コーラは市場から消えました。
すると消費者から旧コカ・コーラがなくなったことに対してクレームが殺到し、旧コカ・コーラをクラシックコーラという形で再販することになったという事例がありました。
これは新しい味に希少性を感じてしまい、正確な判断がされなかったことと、市場から消えてしまった旧コカ・コーラに対する希少性という、二つの希少性の法則が重なり失敗したのでしょう。
最近のコンテンツ・商品で、希少性の法則を活用した成功事例がいくつかあります。
SNSの中で、最近話題になっているコンテンツに『クラブハウス』があります。
クラブハウスは、招待制でユーザー一人に対して招待できるのが2人という条件を付けました。
これに、ここでしか聴けない話やその瞬間しか聴けないという希少価値がより高まることによって、クラブハウスに加入する人が激増することになりました。
この他にも、ホテルの予約サイトの『ブッキング.com』は、それぞれのホテル・部屋の希少性情報をメッセージとして表示し、ユーザーの興味を引く戦略を使用しています。
このように希少性に価値を感じる人の心理を、考えた戦略がヒット商品を生み出すのです。