遺産相続で遺族が揉めないよう、法律を勉強して備えましょう。

遺産分割協議中の預金仮払いが可能に

日常の生活を送る上では、あまり気にする必要はありませんが、相続の問題はある日突然、自分の身に降りかかってくることも珍しくありません。
両親や祖父母、兄弟、姉妹などの親族が亡くなった時に遺産を相続する権利が発生し、遺産分割の協議を親族で行うことになるかと思います。


遺産相続が起こる前は特に問題のなかった親族間も、遺産の相続になると意見が分かれるようになり、親族間で大きな溝を作ってわだかまりを残すことは、決して珍しくないようです。
遺産分割に関する知識を身に着けておくことができれば、実際にそのシーンに遭遇した際に対処できるようになるのではないでしょうか。

遺産相続に関する制度や法律はこれまでに何度も改訂され、遺産相続時に起きるトラブルを少なくするための改善が行われています。
遺産分割協議中に被相続人(故人)の預貯金を仮払いすることができる制度も、相続法の改正によって新たに追加されたものです。
これまでは遺産分割が正式に決定するまでは、被相続人の預貯金の払い戻しをすることが、法律では不可になっていました。
新たに改正された相続法では、被相続人の預貯金の一部を遺産分割協議中でも払い戻しができるように定められました。
この預金仮払い制度が新たに設けられたことによって、故人の葬儀にかかる費用や生前にあった借金の返済などを、仮払金により充当することが可能になり、遺族の負担軽減にも繋がっているものと考えられます。

相続に関する法律のまとめは、相続法で民法の中にしっかり含まれています。

2019年7月1日に相続法の改正がされ、遺産分割前であっても故人の預貯金の一部を払戻すことが可能になりました。
この制度を「預貯金仮払い制度」と呼んでいます。
これまでの相続において問題の発端になっていたのが、故人の葬儀や借金の支払いの問題でした。
葬儀費用は直近で必要になりますし、借金に関しても親族にとってはその支払いは苦痛でしかありません。
この仮払い制度が認められたことによって、金銭的な負担や問題が解決するケースは多くなっていると考えられます。

時代と共に法律も変わるので、定期的に見直す必要がある。

「不足分」は現金で請求可能に

相続の際に故人が遺言状を残している場合には、その遺言に基づいて遺産を分配することになります。
しかし遺言で特定の人物一人のみにすべて相続されるようになっていると、ほとんどが揉め事が発生する兆候になることが推察されます。
このような問題が起こりにくいように、2019年の法改正で見直されたのが遺留分に関してです。
この改正によって法定相続人に最低限の権利が保障されるようになり、これが遺留分になります。
遺留分として定められているのは、基本的に法定相続分の約半分となっています。
そのため故人の配偶者の場合は1/2の相続分のさらに1/2になる1/4が、遺留分に相当することになります。

この遺留分に関して、遺言に記されていないと相続者同士で遺産に関して争いが起きる可能性が高くなります。
例えば遺産が8000万円だったとして、資産価値が5000万円相当の自宅は配偶者に、残り3000万円の預貯金のうち、子供が二人いて長男に2500万円、次男に500万円が配分されると遺言に書かれていたとします。
しかし計算してみると、配偶者の遺留分が2000万円、長男と次男の遺留分はそれぞれ1000万円となり、次男は遺言通りであれば、遺留分に500万円満たない金額しか相続されないことになります。

この場合に次男は、相続する他の二人に不足分の500万円を請求することができます。
このような事態になった時に、改正前は不動産まで含まれて共有しているため、分割することが難しいままになっていました。
最新の法改正では、遺留分に満たない相続分を現金で請求することが可能になっています。
この権利を遺留分侵害額請求権と呼びますが、この権利が発生したことで、共有物の分割訴訟は大きく減少したと考えられています。

介護した「嫁」にも現金の請求権ができる

これまで遺産相続において取り上げられていた問題というのが、介護をしていたお嫁さんに対する相続権です。
長男の妻である血のつながらないお嫁さんが、認知症になったり寝たきりになっている旦那さんの親の介護や世話を長く続けて、大変な苦労をしている家庭は多いと推察されます。
しかしお嫁さんは身内でありながらも血縁関係がないため、介護をしていた夫の両親が亡くなっても相続する権利がありません。
苦労が多いのに見返りが全くないお嫁さんのために、2019年の法改正では相続で見返りが得られるように変更がされました。

ただし今回の法改正では、お嫁さんに相続権が発生したわけではなく、遺産を相続した親族に対して介護等で寄与した分の金額を請求する権利が認められた、というのが正しい表現です。
例えば介護サービスを受けたり、老人ホームに入居して外部のサービスを受ける代わりに、長男のお嫁さんが介護をしていたのであれば、外部のサービス相当の対価を現金で請求する権利があるということになります。
この金額請求権が認められる相続人以外の親族とは、「被相続人の3親等以内の血族の配偶者及び被相続人の6親等以内の血族」と新しく相続法に追記されています。

つまり介護などでお世話をしていたのであれば、長男の妻以外の息子の嫁や孫の嫁にも請求権が認められていることになります。
しかし家政婦として働いていた人が介護を行っていたとしても、こちらは親族ではないため請求権は認められないことになると言われています。
この法改正はお嫁さんにも請求権が生まれ、一見良い改善がされたように思えますが、相続人に本人が請求を行わなければならず、さらに争いが増えるのではないか、と懸念する声も多く聞こえています。