いくつかある株主間契約の項目について、掘り下げて勉強しましょう。

株主間契約とは

個人事業や上場をしていない株式会社では、株主の構成が経営に大きく影響することはありませんが、上場企業においては、株主との関係性が会社の運営を適切に行うために重要になると考えられます。
株主の協力なくしては健全な会社運営は困難となりますが、そのための方法として株主間契約を行う企業は多く存在しています。


株主間契約とは、複数の株主が会社との間で運営方法について合意を行うことを指しています。
株主間契約は、すべての株主との間で交わすものではなく、特定の株主との間での限定での効力を定めるもので、基本的には会社・株主間で自由に設定することが可能です。
もちろん公序良俗に反するものは除きます。

例としては、株主の中で少数派に属する株主は、株主総会での決議を単独で行うことが基本的にできません。
しかし株主間契約を多数派の株主と交わすことができれば、自身が希望する会社運営上の意向を決議させることが可能になる、と推察されます。
株主間契約にはいくつかのメリット・デメリットがありますが、順に説明していきたいと思います。

メリットとしては、まず幅広く規定することが可能になる点です。
基本的に株主間契約が自由に設定できるため、会社・株主間での合意が取れさえすれば、柔軟な設定が可能になります。
一方のデメリットですが、株主間契約には法的な拘束力がなく、仮にこの契約にどちらかが違反したとしても罪に問うことはできません。
そのため株主間契約で定められたものが実行される可能性が、やや低くなるデメリットも考えられます。

個人間でも企業間でも契約を交わすときは内容の確認を必ず行いましょう。

先買権、共同売却権、ドラッグアロング等の項目とは

株主間契約の規定としてはM&Aでも運用されますが、先買権・共同売却権・ドラッグアロングという3つの項目が存在しています。
先買権とは、第三者に対して株式を売却するときに、その取引で決められた売却条件と、同じ条件で買い取ることができる権利を定めたものです。
海外では、ファースト・リフューザル・ライトというように呼ばれています。

先買権が締結されていると、結ばれた一方が株式を第三者に譲渡しようと考えたときに、もう一方がその譲渡条件と同条件で株式を優先的に買い取ることができる、というものです。
次の共同売却権とは、株主が自らが保有している株式を譲渡する際に、他の株主が共同で保有している株式を、共同で売却することができる権利を指します。
共同売却権を株主間契約で定めるのは、株式を抜け駆けで売却し、利益を得ようとすることを防ぐ目的が考えられます。

最後のドラッグアロングは、投資資金を回収する方法のひとつで、複数の株主が持っている会社の株式を売却する際に強制的に他の株主の株式を同じ条件で売却させる権利を指しています。
ドラッグアロングを締結していると、買い手側の株主が売り手の株主以上の比率の株式を有することになっても、強制的に売却をさせることができるので、利害関係の調整が不要になるメリットがあります。

J-KISS(KeepItSimpleSecurity)とは

「転換型新株予約権=J-KISS」
企業の資金調達の方法は、現状では様々な方法が存在しています。
新たに株が発行される前に、株の予約券により資金を調達する方法はこれまでにもありました。
しかし近年新たなベンチャービジネスの資金調達として注目されているのが、J-KISS(KeepItSimpleSecurity)という手法です。
転換型新株予約権という呼び方もありますが、英語の「KeepItSimpleSecurity」の略語のJ-KISSとしての方が知られているでしょう。

シンプルで簡単・迅速にをコンセプトにした新しい資金調達方法になり、今後はさらに注目されることが予想できます。
J-KISSは企業価値の算定を行うことなく、資金の調達を可能にする方法で、起業家にとって有利性のある手法となっています。
スタートアップの段階では、企業価値は基本的に右肩上がりが想定されています。
そこで企業価値の算定を先送りすれば、投資家に企業価値が低い状態で、株式を譲渡することを回避できるというメリットがあります。
そのため起業家にとっても、大きなメリットが得られると推察されます。

スタートアップ期における資本政策が企業の成長には不可欠で、J-KISSは成功に導く可能性の高い手法と考えられます。
J-KISSは新株予約権の一つで、簡単に言うと優先株式をやや安めの価格で取得することができる新株予約権となります。
新株予約権は株式会社に対してその権利を行使すると、株式の交付を受けることができます。
その時点では株式は存在しませんが、J-KISSを有する人は架空の潜在株を持っていることになります。
行使期間(時期)・行使条件・行使価額が設定され、資金調達の時期を合わせる役割も担っています。
新しい資金調達方法として他社に先んじて活用することが、資金調達を有利に進めることになると考えられます。