残される人の為にも、日頃から自分の意思を伝えておくことが大切な遺産について
ポイント1
遺産相続により親族間でトラブルになり、傷害事件や詐欺事件などに発展するケースが、テレビのワイドショーや雑誌で紹介されるケースは決して珍しいことではありません。
どんなに仲の良い家庭や親族の間でも、金銭や不動産等の話になると権利を主張しあうようになり、骨肉の争いになることは、ある意味仕方がないことかもしれません。
ドラマや映画のような出来事は、意外と身近で頻繁に起こっているのかもしれません。
相続に関しては法律も複雑になり、権利が発生した時には多くの手続きや作業が必要になると推察されます。
相続について専門家でもない素人が完全に知ることは難しいかもしれませんが、ある程度のことを把握しておくと後々のためになると思います。
まず遺産を相続する際の解かりにくいポイントのひとつとして、相続税があります。
相続税とは、相続税法に定められた税金になり、死亡した人が有する財産の移転が発生した際に、財産を受け取った人が決められた税金を納めることです。
相続税が法律により定められた背景には、富の再配分という貧富の差をなくす思想が基準となっていると推察されます。
遺産相続が発生したら相続税も同時に発生する、と誰もが思っていますが、相続税には支払う基準が存在しており、必ず発生するものではありません。
遺産を相続する場合には相続額に対しての基礎控除があり、その金額内であれば相続税が非課税になります。
そして非課税で申告対象にならない場合には、相続税の申告手続き自体も不要となります。
遺産相続における基礎控除額は、相続する人数によって変化をします。
基礎控除額は、基本控除の3000万円に相続人一人あたり600万円ずつが加算されるシステムになっています。
例えば相続人が3人の場合は、3000万円+600万円×3人=1800万円の合計4800万円が基礎控除額となります。
つまり相続される財産が4800万円以下であれば、相続税を収める必要がないのです。
ポイント2
相続開始の時期というのは、被相続人が亡くなった時点になり、この段階で既に開始しています。
しかしこの時点では遺産相続について何も決まっておらず、親族間で財産分与の協議が行われるのは、葬儀や初七日などの法要が終わって、落ち着いてからになることが多いと考えられます。
被相続人が亡くなり遺産相続が決定するまでの間、対象の遺産については法律上、相続人全員の共有財産となります。
この間には、共有財産である遺産の不動産を売却したり、預貯金を引き出したりすることは原則として不可となっていますが、最近の相続税法の改正により、葬儀などに必要な費用や借金がある場合の返済に充当することが認められるようになりました。
遺産相続の対象になるものについて、法律上は被相続人が亡くなった時点で保有していたものが対象となります。
不動産・有価証券・預貯金などはもちろん対象となりますが、資産価値のあるものだけでなく、負債も相続対象となっています。
例えば、借入金・保証債務などの借金も相続されることになります。
借金があることを知らずに相続をしてしまうと、亡くなった人の借金も同時に受け継いでしまうことになるため注意が必要です。
さらに亡くなった方が第三者の連帯保証人となっていた場合も、連帯保証人としての権利が相続されてしまうことになります。
ただ定年を迎え、年金を受給されていた場合には、この権利は個人の権利のため相続対象とはなりません。
もちろん国家資格なども同様に個人に発行されたものであるため、相続することはできません。
ポイント3
遺産の相続に関しては、亡くなった方(被相続人)が遺言書に記載してさえいれば、自由に決めることが可能です。
しかし基本的には、民法によって相続人としての権利を有する人を定めています。
基本的な相続人のルールは、以下のようになっています。
「被相続人の配偶者は相続する権利を常に有する」
「配偶者を除く親族は実子、父母、兄弟の順に相続の権利を有する」
「相続人が亡くなった場合は、相続人の子供が相続権を受け継ぐことができる」
「順序としては配偶者(婚姻届けが提出され法律上の夫婦であることで内縁関係の場合は非対象者となる)⇒子供(子供が亡くなっている場合、孫が対象)⇒父母(亡くなっている場合、祖父母)⇒兄弟姉妹(亡くなっている場合、甥・姪)」
しかし例外として、法定相続人の対象であっても、相続の権利が認められない場合もあります。
例えば遺産を受け取りたいがために、被相続人や他の法定相続人を殺害したり、殺害しようとして裁判で有罪となった場合には、相続権は認められません。
遺言書を偽造や変造をしたり、被相続人を脅迫をして自らに相続させようとした場合なども認められないのです。
このように遺産相続に関して、法律に触れるようなことが行われると、相続権が破棄されると考えられます。